- 自閉症の主な症状は脳のどの「ホットスポット」に関連しているのか?
- 顔の認識に関連する脳内ネットワークと自閉症の関係は?
- 攻撃性や焦燥感などの症状を引き起こす脳の「ホットスポット」を特定できるか?
医師が自閉症を主要な症状に分解し、その症状を脳の「ホットスポット」にマッピングし、その領域を脳刺激で直接治療できるとしたら。
もしそれが実現すれば、発達障害による症状の治療を根底から覆します。
これは、米ボストン小児科の自閉症スペクトラムセンターでトランスレーショナル・ニューロイメージング研究所を率いる小児神経科医で研究者のアレクサンダー・リー・コーエン博士の構想です。
「私たちは、人間の行動のそれぞれが、異なる脳内ネットワークにマッピングされることを発見しました」
コーエン博士は、自閉症に共通する問題である「相貌失認」、つまり顔、それも愛する人の顔が認識できないことを研究することから始めました。
コーエン博士は、自閉症スペクトラムの人たちを調査した結果、顔認識テストが苦手な人ほど、自閉症の症状が重く、特に社会性の障害があることを発見しました。
そして、相貌失認を理解することで、自閉症を理解することができるのではないかと考えました。
この問いに答えるため、まず、脳卒中後に相貌失認を発症した人を調査しました。
脳MRIを解析したところ、多くの人が「紡錘状回の顔領域」と呼ばれる部位に損傷を負っていることがわかりました。
また、「病変ネットワークマッピング」と呼ばれる手法で調べたところ、その部位に直接の障害はなくその部位につながる脳の部位に障害があった人もいました。
「症状を引き起こす原因は、脳の一部ではなく、脳のネットワーク全体なのかもしれません」
自閉症との関連を明らかにするために、コーエン博士は次に結節性硬化症の患者を研究しました。
この稀な遺伝子疾患では、脳や他の臓器に結節と呼ばれる異常な成長が形成される。
そして、罹患した子どもの40パーセントが自閉症をかかえています。
コーエン博士はこう言います。
「脳内の塊茎のパターンが自閉症の発症確率に影響を与えるかどうかを調べたいと考えました」
その結果、実際に影響を与えていることがわかりました。
115人の結節性硬化症の幼児を分析したところ、さきほどの「紡錘状回の顔領域」に結節を持つ幼児は自閉症を発症する確率が3.7倍であることがわかりました。
コーヘン博士は現在、結節性硬化症ではない自閉症の子どもたちが、この領域やそれにつながる脳ネットワークに異常があるかどうかを調べたいと考えています。
そのため、15歳から18歳の10代の若者を対象に、自閉症の子とそうでない子の脳のMRIを比較する研究を開始しました。
研究チームは、顔面処理能力、社会性障害、自閉症症状の重症度について参加者一人ひとりを評価し、これらが脳画像所見とどのように相関しているかを調べているところです。
顔を認識できないことが影響し自閉症を引き起こすのか、それとも自閉症のために顔が認識できないのか。
コーエン博士は、この疑問にも答えたいと考えています。
「自閉症の人たちは、顔を処理するために特定の脳ネットワークに依存しすぎているのではないかと考えています(おそらく、顔全体ではなく、小さな細部に焦点を当てた脳ネットワーク)。
そのために、自閉症の子どもたちは、苦手なのです。
もし、自閉症の子どもたちの相貌失認を治療することができれば、社会的機能も向上するかもしれません。
これから、いろいろ解明したいと考えています」
コーエン博士は、経頭蓋磁気刺激(TMS)のような非侵襲的な治療法を想定しています。
TMSは、小さな電磁石が脳の表面で電流を誘導し、狙った場所を刺激します。
TMSは安全性が確認されており、成人のうつ病や強迫性障害の治療に認可されているものです。
ボストン小児科の研究者は現在、薬物や手術で効果的な治療ができない一部のてんかんの子どもたちを対象に、TMSのテストを行っています。
最終的にコーエン博士は、顔認識の困難だけでなく、さまざまな自閉症の症状や行動を引き起こす脳のホットスポットやネットワークを特定したいと考えています。
その中でもコーエン博士が最も注目しているのは、自閉症の子どもたちやその家族にとって困難な状況を生み出す可能性のある、攻撃性や焦燥感についてです。
現在、自閉症の子どもたちは、もともと精神病の治療薬として使われていた薬で治療されることが多いのですが、副作用が大きく、必ずしも効果があるとは限りません。
コーエン博士は新しい研究が、この状況を変える一助になることを期待しています。
コーエン博士の研究チームは、自閉症の人、脳卒中の人、その他の脳損傷の人など、攻撃的な行動を起こす危険性のあるさまざまなグループの脳地図データを利用し、攻撃性の「ホットスポット」を探しています。
現在までに、1200人以上の子どもと大人からデータを集めています。
「攻撃性の高い人と低い人で分類し、脳のどこが違うのかを調べることができます。
攻撃性の高い人に共通するものを見つけ、治療のターゲットにできるものがあるかどうかを調べることができるのです。
もし、これらの症状の芽を早い段階で摘むことができれば、脳が別の道へ進むのを助けることができるかもしれません」
(出典・画像:米Boston Children’s Hospital)
うちの子は、本当に静かなものですが、自傷行為や他害が行う子である場合には本当にたいへんです。
その子も親も、それは本当に深刻です。
まるで脳の機能の全般を低下させてしまうように見える強い薬の処方ではなく、攻撃的なところだけを「非侵襲的な方法」で治療できるのであれば、本当にそれは望まれる、助かるものだと考えます。
実現を願っています。
(チャーリー)