- 自閉症や発達障害を持つ人が、自分の能力や可能性を適切に評価される方法はあるのか?
- 航空業界や他の産業において、障害を持つ個人が向き合う壁を乗り越えるための支援策は十分なのか?
- 障害を抱えながらも夢を追う人が、自分の存在や価値を社会に認められるためには何が必要なのか?
ヘイデン・マクドナルドは、いつも世界から自分は外れていると感じていました。
何千フィートもの上空からヘイデンはこう言います。
「世界から切り離された、私の逃避行です。
自閉症スペクトラムを持つ私にとって、人生は少し困難なものです」
まだ少年だった頃、祖父はヘイデンを連れてオーストラリアのナラーバー山脈やフリンダース山脈を飛行し、それまで知らなかった世界を見せました。
これをきっかけに、ヘイデンは空が大好きになりました。
「上空にいると、何か違う視点になれるんです。
世の中の嫌なことがすべて聞こえなくなります」
しかし、日常から解放されるだけでなく、空はもっと大きな意味を持つようになりました。
17歳でレクリエーション用パイロットの資格を取得したヘイデンは、高校の最終日にプロのパイロットになるための申請手続きをしました。
しかし、彼のもとに「医療上の問題による拒否」というメールが届きました。
「あなたの自閉症スペクトラム障害が、航空航法に許容できないリスクをもたらすためです。
そう書かれていました。
そんなレッテルを貼られた気持ちを想像できますか?」
チャンスに恵まれなかったヘイデンは、自分でチャンスを作ろうと決心し、オーストラリアを一人で飛び回りました。
「手つかずのビーチと起伏に富んだ湾で有名なエスペランス地方は、見ごたえのある場所です。
ノースマン周辺は、夏の日にはとても美しい。
赤い点々、塩湖の白、青い空、なぜ飛行機に乗るのかを思い出させてくれます」
今は21歳になったヘイデンは、人が少ない地域で育ったため、自分のような人を見かけることはありませんでした。
これまで、自分はどのような存在なのかがわからないように感じられることもありました。
しかし、飛行機の操縦席で自分の目的と可能性を見出しました。
西オーストラリアの南海岸は白い砂浜で世界中に知られていますが、その細かな砂にヘイデンは感覚過敏になってしまうことがありました。
しかし、上空に舞い上がったヘイデンはすべてを楽しむことができます。
「海岸線が、本当に美しい」
ヘイデンは車の運転と同じ医療基準のレクリエーション・パイロット免許は取得しています。
1人乗りまたは2人乗りのレクリエーション用飛行機を操縦することができます。
しかし、プライベートジェットを操縦できるパイロット免許を取得するには、より厳しい健康上の基準が求められています。
オーストラリアでは、民間航空安全局(Civil Aviation and Safety Authority)がパイロット免許の監督をしていますが、個々のケースについてコメントはしていません。
自閉症に関する特定の医療ガイドラインを設けていないものの、「ADHDに関するガイドラインで確認できる」としています。
ヘイデンによれば、必要な医療書類の提出や健康診断には「何の問題もなかった」といいます。
精神科の検査で問題が発生したと考えています。
「合格するかどうかで自分の夢が決まるとわかっていたのに、だんだん嫌になってきて、指示されたことについていけなくなりました」
テストの「神経質なアプローチ」のせいだとヘイデンは言います。
「テストは、個人的なスキルやその他のことが評価されますが、問題はそれが当日の成績に基づいていることです。
私は飛行機を操縦するときには、いつもと違うことを実感しています。
飛ぶと人が変わると言ってもいいくらいです。
私の飛行に関わる能力以外のことで判断されるのは納得がいきません」
CASAはこう述べています。
「自閉症であれば、パイロットライセンスの取得はできないということはありません。
それぞれの人にあわせて、評価されています。
CASAが下したすべての医学的判断は、申請者の要求に応じて再考することもできます。
話し合うことも可能です」
ヘイデンはこれまで必要な医療文書や検査を受けるためにすでに多くの費用がかかっているため、免許を取得できるかわからないまま、さらに費用をかけることが難しかったため、そうすることはありませんでした。
その代わり、ヘイデンは航空業界とより広い社会の両方において、自閉症による症状への理解を深めることを望みました。
GoProカメラで武装し自閉症の人の生活と「空」を紹介するブログ、Wings Without Barriersを立ち上げました。
「目的の1つは、教育を通じて自閉症に対する理解と受容を生み出すことです。
次に、航空の安全性を損なわずに免許試験の医療上のプロセスを変えることです」
ヘイデンは9月にオーストラリアを単独で一周する予定です。
ヘイデンにとって、この旅は健康診断書以上のものです。
書類上ではなく、一人の人間として見てもらうためのものです。
6週間かけて、オーストラリア全国の地方や遠隔地のコミュニティを訪れ、自閉症の人の生活について学校で話し、自閉症を持つ地域の若いパイロットの非公式なネットワークを構築する予定です。
「自閉症は学校のカリキュラムで教えられていませんし、企業も発達障害の人たちにどのようにアプローチすればいいのかわかっていません。
発達障害の人たちに優しいオーストラリアになってほしい。
そうならなければ、発達障害の人たちが置き去りにされてしまいます」
ヘイデンの計画に、母親のフルールには「何かあったらどうしよう」という気持ちが正直あります。
しかしそれでも、ヘイデンの活躍を目の当たりにし、友人や家族に支えられながら歩んでいることを知ってこう言います。
「息子の夢を止めることはできません。
息子は、自閉症という診断に縛られることはありません。
CASAの判断については、完全に理解しています。
しかし私はただ、他の何かではなく、必要とされる能力できちんと評価されるようになることを望んでいます」
ヘイデンにとって、飛行機は、必ずしも自分を理解してくれない世界の中で、自由を感じさせてくれるものでした。
そして今、ヘイデンは人々が「診断書の向こうにいる人を見る」ことができるように、変化を起こそうと考えています。
「私は、人々が自閉症についてもっと知り、理解されることを望んでいます。
診断書だけを見て、ダメと決めつけるのはダメなんです」
幼少期から続く孤独感、航空業界からの締め出しなど、ヘイデンはさまざまな壁にぶつかってきました。
しかし、オーストラリア一周の旅に出るにあたり、彼のメッセージはシンプルです。
「もし、チャンスがないのなら、自分で作るんです」
(出典・画像:豪abc)
すごく勇気づけられます。
すごくカッコいいです。
空を飛んで、オーストラリアを変え、世界を変えていってください。
(チャーリー)