- 自閉症の人は幽霊や死後の世界についてどう考えるのか?
- 自閉症の人は「心の理論」に関してどのように異なるのか?
- なぜ自閉症の人は無神論者である傾向があるのか?
「人はどうして幽霊を信じるのか?」
多くの人は、これは文化や宗教に由来するものだと説明することでしょう。
私は自閉症の人たちに関する新しい研究で、私たちが心を身体から切り離したものとして見る傾向から生じるという、異なる理由の可能性に着目しています。
心がどのように働くかを示す基本的な原理から生じる、人々にとって自然なことである可能性です。
幽霊のような超自然的な存在がいるという考え方は、ユダヤ教やキリスト教の伝統的な文化圏でよく見られるものです。
しかし、私たちの信念が宗教から生まれるのではなく、私たちの信念から宗教が生まれるのかもしれません。
心理学者のポール・ブルームは、生まれたばかりの赤ちゃんに、「核知識」と呼ぶ、ある種の心理的原則があると指摘しています。
「対象が何であるか、対象がどのように振る舞うかについて、生まれながら明らかに知っている」
ことがあるのです。
たとえば、生まれたばかりの赤ちゃんも、あるボールが別のボールと衝突するのを見た場合、当たったボールも同じ方向にすぐに動くことを期待します。
それに対して、異なる動きをした場合には、赤ちゃんは驚くからです。
これは、それらをどのくらい長い間見ているかで判別できます。
そして重要なことは、赤ちゃんも人間は自分の知っていることや信じていることによって動くことも知っています。
たとえば、赤ちゃんはボトルなどの物体に向かって人が手を伸ばすのを見て、ボトルの場所が変わっても、ボトルに向かって手を伸ばし続けることを期待します。
赤ちゃんからすれば、物理的にはぶつかって動くボールと手に違いはありません。
しかし、手に何かがぶつかって動いているわけではありません。
それでも、手が動くことを赤ちゃんは期待します。
動いているのは、目に見えないその人の「精神」によるものだと赤ちゃんは理解しているからです。
目に見える物理的な反応と目に見えない精神による反応。
それらは違うもの。
ブルームが提案したように、精神は何か違うもの、幽玄なものであり、それが人を心と身体の二元論に導くかもしれません。
「自閉症の人は死後の世界があると思うか?」
もしブルームが正しいのなら、「心の理論」(他者の心の状態などを推測する心の機能)が直観的物理学と相互作用して二元論を生み出すのなら、心の理論が弱ければ二元論も弱くなるはず。
そう、私は考えました。
これまでの研究によれば、自閉症の人は心の理論が弱くなっています。
他人が考えていることを直感的に理解することが少なく、推論に頼ることが多いのです。
もしそれが本当なら、そして自閉症が心の理論を弱めるなら、二元論を弱めることも予想されます。
そこで、私と同僚は自閉症の人たちのところに行き、体と心に関する推論を評価し、本当に体と心を分ける傾向が弱いかどうかを確認することにしました。
そして、私たちが得た結果は、確かにその通りであることを示唆しました。
自閉症の人たちに比べると、自閉症でない人たちは心の理論が強くなっています。
そのために幽霊を信じているのかもしれません。
今回の研究ではとくに幽霊について聞いたわけではありません。
ある人の身体の複製を作ることができたらどうなるかを推論してもらいました。
その人のどのような特徴が、複製に移るのでしょうか?
その人の思考を幽霊的なものとして考えたら、複製には移らないという論理です。
自閉症でない人は思考が複製に伝わるかどうか確信が持てないようでした。
しかし、自閉症の人は「きっと伝わる」と考え、思考をより身体の一部として考えていることがうかがえました。
次に、肉体が関係なくなった「死後の世界」ではどうなるのかを尋ねてみました。
そこには何が残るのか?
自閉症でない人たちは、思考は存続すると考えていました。
しかし、自閉症の人たちは確信が持てないようでした。
別の研究で、自閉症の人はそうでない人よりも無神論者である傾向があることが分かっています。
これもこの結果と一致します。
私がTwitterでこの研究の話をすると、自閉症コミュニティの多くの人が同意しました。
ある人はこう書いていました。
「え、何?
自閉症でない人たちは本当に死後の世界があると思っているの?
そんなことありえない」
彼らの言うことは間違っていないはずです。
精神と肉体を切り離して考えるのは、完全に非合理的だからです。
しかしそれでも、私や多くの人が精神と肉体は別だと考えています。
米ノースイースタン大学 認知心理学者アイリス・ベレント
サイエンスやビジネスにおいて、活躍している自閉症、発達障害の人は少なくありません。
より合理的な人の存在。
人類はこうして多様であるからこそ、発展できたのです。
(チャーリー)