- 遠隔療育は自閉症の子どもにも効果がありますか?
- 自閉症の子どもにおける運動療育の具体的な方法は何ですか?
- 親が遠隔療育にどのように関与すればよいのでしょうか?
新型コロナウィルスの流行初期、一部の医療が遠隔医療モデルに移行したころです。
米コネチカット大学の農学・健康・天然資源学部のスーダ・シリニバサン運動学助教授は、自閉症の子に対する運動を用いた療育介入の効果を評価する新しい多施設研究をはじめました。
シリニバサン助教授らの研究チームは、パンデミックの初期に仮想遠隔医療形式を採用し、臨床試験プロトコルに変更を加え、家族にバーチャルと対面式の両方の参加方法を提供しました。
この転換により、自閉症の子に対しての療育についても比較することが可能となりました。
この研究成果の一部は”Iproceedings”誌に掲載されています。
この研究の結果、運動療法を行った子どもたちは、遠隔で行っても、運動能力テストで改善がみられました。
「重要なのは、対面でも遠隔でも、同等の改善が見られたことです。
これは、学齢期の自閉症の子に運動の療育を行うのに、遠隔医療も有効な手段であることを示唆しています」
今回の研究では、5歳から14歳の子どもたちを、創造的運動の療育、一般的運動の療育、座位での遊びの療育、の3つのグループで評価をしました。
少人数のグループで行われるこれらの全身運動の療育は、協調性、バランス、模倣、筋力、持久力、敏捷性などの運動技能を促進し、同時に社会的コミュニケーションと行動技能における子供たちの主な困難にも対処することに焦点を当てたものです。
創作運動グループでは、音楽に合わせて全身を動かすゲームやダンス、楽器遊びを行いました。
一般運動グループでは、持久力と敏捷性を高めるために、駅伝や障害物競走などの筋力系のアクティビティやゲームに参加しました。
座位で遊ぶグループは、現在の自閉症の標準的なケアであり、読み合わせやブロック、図画工作など、より座ったままの活動に取り組みました。
遠隔のバーチャル配信での療育では、家族に小道具と活動の説明書が入ったキットを贈りました。
研究チームは家族とZoomで通話し、子どもやその家族・介護者と一緒にアクティビティに参加してもらい、指示を与えました。
このバーチャルセッションでは、保育者が「部屋の中のセラピスト」として、子どものニーズに合わせてより実践的な援助を行うことが多くなっていました。
3つのグループの子どもたちは、トレーニング方法に関係なく、標準化された筋力テストと運動能力を評価するその他のテストを行いました。
「筋力と筋持久力は、たった8週間で向上することができました」
シリニバサン助教授はこの研究によって、遠隔での療育の成功の鍵は、親などの介護者の関与だった、と述べています。
「これは、遠隔医療にとって大きな利点だと思います。
もし家族が望むのなら、研究期間終了後も活動を継続できるよう、家族を訓練することもできます。
本当に成功するのは、親が子どもを促進することができたときです」
自閉症の子どもたちがバランスや協調性といった基本的な運動技能に苦労していることを示す証拠が近年増えています。
シリニバサン助教授は、これまでのほとんどの療育は、伝統的に障害の社会的コミュニケーションと行動的側面に焦点を当てているため、動きをベースにした療育は、自閉症の子どもにとって重要でなものになると述べています。
共同研究者である米デラウェア大学のアンジャナ・バットが発表した論文によれば、自閉症の子どもの87パーセントに運動機能障害のリスクがあることが判明しています。
これは、自閉症スペクトラムが脳の複数の領域に影響を及ぼすことが原因であると考えられています。
シリニバサン助教授はこう言います。
「ASDは多系統の障害であるため、運動障害は十分に認識されず、注目されてきませんでした。
社会性やコミュニケーションなど、運動に関する問題よりも、それらの問題が前面に出てくるのです。
とはいえ、考えてみれば、話すとき、歩くとき、食べるときなど、世の中ですることはすべて動きが必要です。
私たちは、動きによって周囲の世界を体験しているのです」
この研究の次のステップは、より大規模な試験を行うことです、
また、遠隔医療による療育は、よりアクセスしやすくなることが期待できるため、今後も研究を続けたいとシリニバサン助教授は考えています。
「私たちは、家族、介護者や医師をもっと研究に取り込みたいと考えています。
なぜなら、私たちがこの研究を行っている理由は、それが実践に結びつかなければならないからです」
親も積極的に一緒に取り組むのであれば、それは良いに間違いありません。
そうであれば、むしろ「遠隔」であるほうが、そうならざるを得ないので納得です。
(チャーリー)