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男の子の発達障害と母親のX染色体の遺伝子変異との関係。研究

time 2022/10/26

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

男の子の発達障害と母親のX染色体の遺伝子変異との関係。研究
  • 発達障害は遺伝によるものですか?
  • 男の子が発達障害を持ちやすいのはなぜですか?
  • X染色体にある遺伝子変異はどのように自閉症やADHDに影響を与えるのですか?

男の子が母親のX染色体から受け継ぐまれな遺伝子変異が、自閉症、トゥレット症候群、注意欠陥・多動性障害(ADHD)を発症する可能性を高めることが、新しい研究で明らかになりました。

「この研究は、自閉症スペクトラム障害、トゥレット症候群、ADHDに対する男性の脆弱性の根底にある遺伝的メカニズムを理解するのに役立ちます」

そう、研究を行った米カリフォルニア大学サンフランシスコ校精神医学・行動科学のジェレミー・ウィルシー准教授は述べています。

今回の研究により、X染色体遺伝子MAGEC3が自閉症に関与していることが初めて明らかになりました。
より多くの自閉症患者や他の神経発達疾患患者のX染色体を分析することで、さらなるリスク遺伝子を特定することができるとも言います。

「これらの遺伝的危険因子を調べることで、これらの疾患のリスクと回復力の根底にあるメカニズムが明らかになり、その結果、治療法の候補が見つかるかもしれません」

自閉症、トゥレット症候群、ADHDは、潜在的な診断バイアスを考慮に入れても、男の子に著しく多く現れます。
その理由の一つとして考えられるのは、X染色体を2つ持つ女性ができるのと同じようには、X染色体を1つしか持たない男性は、X染色体遺伝子の変化したコピーを補うことができないことです。

しかし、自閉症、トゥレット症候群、ADHDと関連するX染色体上の遺伝子変異を見つけようとするこれまでの研究では、そのような変異を検出するのに十分な人数を分析することができなかったこともあり、これまで実を結びませんでした。

ウィルシー准教授らは、サイモン・シンプレックス・コレクション(SSC)に属する、自閉症でない両親から生まれた自閉症の男の子1人と自閉症でない男の子を2人以上を持つ65家族のエクソーム(ゲノムのタンパク質コード化領域)を解析しました。

その結果、自閉症でない女性が、149の遺伝子が存在する4つのX染色体領域を一貫して自閉症の男の子に受け継がせ、自閉症でない男の子には受け継がせていないことを発見しました。
このような遺伝は、女性のX染色体のDNAが、卵細胞が作られる際にシャッフルされたり、「再結合」したりすることの結果と考えられます。

自閉症の男の子の4つのX染色体領域は、自閉症でない男の子に比べ、まれな変異が60パーセント多くなっていました。
また、自閉症の子は、脳で発現する遺伝子の上位半分にランクされる遺伝子に影響を与える稀な変異体を約2倍も持っていました。
同様の結果は、サイモンズ財団が支援するもう一つの取り組みであるSPARKに参加している11391人の自閉症の男の子と1549人の自閉症でない兄弟を対象にした追跡調査でも現れました。

研究チームがトゥレット症候群の少年570人とADHDの少年332人のエクソームデータを解析したところ、自閉症の人たちに見られるよりもさらに強い影響があることがわかりました。
トゥレット症候群の人で、X染色体にまれな変異を有する人はそうでない人に比べて2.1倍、ADHDの人はそうでない人に比べて2.5倍となっていました。
Nature Communicationsに提出されたプレプリント論文で、この発見は詳述されています。

さらに、SSCとSPARKを合わせたデータから、13052人の自閉症の男の子と、2295人のそうでない男の子を分析したところ、自閉症と遺伝子MAGEC3との間に新たな関連性があることもわかりました。

この遺伝子は神経発達を含むさまざまな疾患と関連しています。
本研究に参加していない米カリフォルニア大学サンディエゴ校の精神医学アーロン・ベスタマン臨床助教授はこう言います。

「彼らは、今まで発見されていなかった自閉症のリスク遺伝子を特定しました。
もっと明らかになれば、発達障害に対する男性の遺伝的脆弱性のメカニズム、とくに男性によく併発する、これらの障害の重複リスクについて、何らかの光を当てることができるかもしれません」

男の子に発達障害の割合が明らかに高いことに関する研究は、しばしば「女性の保護効果」に焦点が当てられていると、ベスタマン臨床助教授は言います。
女の子は自閉症になりやすい因子に対して本質的に抵抗力があるという考えです。

「男性の遺伝的脆弱性についてはあまり強調されてきませんでした。
このテーマについて新しい研究がなされるのは喜ばしいことです」

性染色体以外の染色体における自然変異または「de novo」変異(親から受け継いたのではない新しく発生した変異)が、言葉に関連しないIQの低下と関連していることは、これまでの研究で明らかにされています。
しかし、今回の研究では、自閉症の子のX染色体上のまれな変異体ではそのような関連性は見いだせませんでした。
むしろ、言葉に関連しないIQが平均以上の自閉症の子のほうが、これらの変異体を自閉症でない子に比べて40パーセント多くもっていると考えられました。

全体として、自閉症ではX染色体上のまれな変異体の約20パーセント、ADHDでは24パーセント、トゥレット症候群では28パーセントが関連している可能性があると、研究チームは推定しています。

ただしそれでも、今回の研究でわかったこれらの変異は自閉症、ADHD、トゥレット症候群の発症に対して、2〜3パーセントしか寄与していません。

「この研究結果は、母親が子どもの診断に責任があると一般的に示唆するものではありません」

そう、ウィルシー准教授は述べています。

(出典・画像:米SPECTRUM)(画像:Pixabay

男性の性染色体はXY、

女性の性染色体はXX、

男性に多い自閉症、ADHDなどに影響を与える遺伝子の変異はXにあるのではないかと考えられてきたものの、大規模な調査分析で、それを確かに見つけた。(女性に少ないのは、Xが2つあるために、そうした変異を防ぐためと考えられている)

なお、そうした変異があっても、自閉症、ADHDなどの発症には2,3パーセントの影響。

という研究です。

自閉症と関連する遺伝変異は父親由来。年齢は関係なし。研究

(チャーリー)


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