- 自閉症の成人において、睡眠障害とうつ症状にはどのような関連がありますか?
- 睡眠効率の悪さや寝付きの悪さは、うつ症状にどう影響しますか?
- 自閉症の成人が睡眠不足を改善するためにはどのような方法がありますか?
自閉症スペクトラムの成人の睡眠不足を治療することで、うつ症状が軽減される可能性が示唆される研究結果が発表されました。
うつ病の成人は睡眠障害を持つことが多いという研究結果があります。
そして、自閉症の成人は広く睡眠障害に悩んでいることが報告されています。
今回の研究は、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校精神・行動科学科のリエナ・A・ランピネンとシュティン・チャンにより行われました。
ランピネンらはこう記しています。
「本研究は、自閉症の若年成人における睡眠障害のパターン、および関連する人口統計学的要因を制御しながら、うつ病症状との関連性を記述することを目的としました」
この研究により、研究チームは、睡眠とうつ病に関して一般集団ですでによく知られていることを発展させ、若年成人の睡眠パターンに対しての自閉症の影響に注目しました。
Simons Foundation Powering Autism Research for Knowledge(SPARK)研究マッチング登録から、315人の幼少期に自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断された、18~35歳の今回の研究への参加に同意した成人が対象となりました。
研究チームはこの315人の成人のうち、さらにSPARK質問票で3つの睡眠に関わる項目のうち、1つ以上について情報を提供している人だけを評価しました。
抑うつ症状については、Beck Depression Inventory-II(BDI-II)を用いて分析し、0~3のスケールで症状の重症度を測定しました。
また、研究チームは、過去1週間の睡眠を評価する次の主要項目からなる睡眠質問票を作成しました。
- 睡眠開始後の目覚め
- 睡眠までの時間
- ベッドで過ごした時間
- 総睡眠時間
研究チームは、睡眠特性変数の記述統計を作成し、BDI-IIスコアを用いて、睡眠とうつ症状の関係を検討しました。
年齢、性別、交際状況、学業状況、子ども、有給休暇などの人口統計学的変数も考慮されました。
その結果、研究に参加した自閉症の成人の86パーセントが、主な睡眠障害の少なくとも1つをかかえていることを発見しました。
研究に参加した睡眠障害をかかえている自閉症の成人のうち、60パーセントが睡眠効率の悪さ(寝ている時間に対して、実際の睡眠の時間が少ない)を、39.5パーセントが睡眠時間の不足、36パーセントがなかなか寝付けない問題をかかえていました。
そして、睡眠効率の悪さと、寝付きの悪さは、うつの症状と大きく関連することもわかりました。
一方で、総睡眠時間はうつの症状と関連はしていませんでした。
また、研究に参加した睡眠障害をかかえている自閉症の成人の3分の1以上が睡眠時間は7時間未満でした。
一方で約2割が9時間以上眠っていることもわかりました。
またデータの分析から、睡眠開始後の覚醒と寝付くまでの時間が、睡睡眠効率とうつ病の症状と関連していることが示されました。
寝付くのに時間がかかる人は、そうでない人よりも高く、うつの症状を経験していました。
結論として、自閉症の若年成人では、寝付くのにかかる時間の長さと睡眠効率の低下の両方が、BDI-IIにおけるうつ病の症状の増加と関連していることが明らかになりました。
こう述べています。
「かなりの割合の自閉症成人が睡眠障害を経験しており、睡眠効率の低下となかなか寝付けないことが、自閉症の人のうつ症状の増加と関連することが示唆される」
この研究「Patterns of sleep disturbances and associations with depressive symptoms in autistic young adults」は、Wiley Online Libraryに掲載されています。
なかなか寝付けない、すぐに目が覚めてしまう。
誰にとっても不健康につながりそうですが、自閉症の方ではとくにそれらがうつ病につながってしまうということです。
体内時計が正しく機能しないことが自閉症、睡眠障害の原因。研究
(チャーリー)