- スクリーンタイムが自閉症の発症に影響を与えるのでしょうか?
- 自閉症の子どもはなぜ他の活動よりもスクリーンタイムを優先するのでしょうか?
- スクリーンタイムの増加が子どもの健康や社会スキルにどのような影響を与えるのか?
1984年、米国小児科学会は子どもたちのテレビの見過ぎによる影響について、保護者や臨床医に注意を促し始めました。
当時、米国小児科学会は、長時間テレビ画面の前に座っていると、暴力的な番組が原因で攻撃的な行動を助長したり、テレビを見ることで外遊びなどの他の活動から時間が奪われ、肥満の原因となるのではないかと懸念していました。
それ以来、研究は拡大し、子どもの他の健康指標を調査し、過度のテレビ視聴と睡眠不足、学業不振、認知の遅れを関連付けました。
そして現在、心配されているのは「スクリーンタイム」です。
それはテレビだけではありません。
子どもたちは何時間もコンピューターの前で過ごし、タブレット端末でインタラクティブなゲームをし、携帯電話でTikTokをスクロールしています。
このような新しい生活様式により、子どもの発達とスクリーンタイムに関する研究が広がっています。
いくつかの研究は自閉症との関連を立証していますが、
これらの大規模な研究は「因果関係を理解するためのものではなかった」
と、オーストラリアのテレソン・キッズ研究所と西オーストラリア大学自閉症研究のアンドリュー・ホワイトハウス教授は言います。
スクリーン使用時間と自閉症との関連性を示唆する最初の研究は2000年代前半に行われ、自閉症の子どもはスクリーンと優先的に関わる傾向があることを示唆する限られた研究でした。
その後、2008年に行われた自閉症の子の自由時間の過ごし方に関する調査では、自閉症の子が他のどの活動よりも長くスクリーンに触れていることが示されました。
それ以来、スクリーン利用時間の増加は、自閉症や自閉症的特徴の可能性を高めるとする研究がさらに行われています。
ホワイトハウス教授はこう言います。
「このような関連性は、実際にあると思います。
しかし、その因果関係は明らかにされていません」
スクリーンタイムと自閉症を関連づけた研究は、ほとんどが疫学的研究に頼っています。
こうした研究では、家庭の収入や親自身がスクリーンの前で過ごす時間など、子どものスクリーンタイムに影響を与える可能性のある家庭環境の要因が考慮されていないことがあります。
ホワイトハウス教授は、JAMA Pediatrics誌に掲載された、1歳児のスクリーン利用時間の増加と3歳までに自閉症と診断される可能性の増加とを関連付けた新しい論文について、この点を指摘しました。
ホワイトハウス教授は、「スクリーンタイムは病気にする魔法のようなものではない」と言います。
この研究を行った著者自身も、この研究では、出生前や育児環境などの家庭の二次的要因に十分な重きを置いていないことを指摘しています。
それでも、スクリーンタイムと自閉症の関連はメディアで大きく取り上げられ、この論文は、データサイエンス企業のAltmetricが指標とする最も読まれている研究論文の95%にランクインしています。
しかし王立小児科・小児保健カレッジの医師が940の要旨と12のシステマティックレビューを分析した結果、子どもの健康全般とスクリーンタイムとの関連性すら希薄であると結論づけています。
オーストラリアのパースにあるカーティン大学の准教授で、テクノロジー使用が子どもに与える影響の専門家であるレオン・ストラッカーはこう言います。
「スクリーン使用と健康上の成果との関係を、他の種類のライフスタイルとの関係と比較すると、朝食を食べているかどうかよりも弱い関連になります」
ストラッカーは睡眠と食事のパターンが、スクリーンタイムを含む他の要因よりも子供の幸福に大きな影響を与えることを示した研究を引用してそう言います。
研究によってスクリーンタイムと自閉症の関連性は示されていますが、関連性の方向性そのものを特定することはできていません。
つまり、
スクリーンタイムが自閉症を引き起こすのか(専門家によれば、その可能性は低い)、
それとも自閉症の子どもはスクリーンタイムを求める傾向があるのか、
ということです。
シンガポール国立大学の発達行動小児科の主治医で小児科の助教授であるイブリン・ローは、この方向性の問題を理解することに重点を置いています。
ロー助教授のの最新の研究は、自閉症に特化したものではなく、スクリーンタイムと社会的スキルの関連性を中心に行われました。
その結果、スクリーンタイムが社会的スキルの低下を引き起こすということは示されなかったとロー助教授は言います。
さらに、過去20年の間に、自閉症の分野では、遺伝が自閉症の発症に大きな役割を果たすことが認識されるようになったと、オハイオ州ユニバーシティハイツにあるジョンキャロル大学の心理学、ローマス・フレイジャー教授は言います。
22156人の自閉症の人を含む200万人以上を対象とした最近の研究によれば、自閉症を発症する確率の約80%は遺伝に関係するによるものでした。
スクリーンタイムと自閉症の問題についての研究では、遺伝を考慮に入れることはあまりありません。
これは、最近のJAMA Pediatricsの論文に関するホワイトハウス教授のもう一つの批判です。
「子どもには遺伝的背景もある。
遺伝的背景とは無関係に『スクリーンタイム』だけが自閉症につながるという考えは、シンプルにおかしい」
フレイジャー教授は、スクリーンタイムが自閉症を引き起こすことを説明しようとする研究について疑っています。
一般にスクリーンタイムが多すぎると社会性の発達が阻害される可能性があることは認めながらも、
「因果関係は逆だと思います」
そう言います。
研究で見られる関連性は、自閉症の子どもたちがより多くのスクリーンタイムを欲していることの産物であると考えています。
この問題の研究の難しさのひとつは、日常生活にスクリーンが普及していることです。
また、保護者からの報告に頼った研究では、不正確であったり、子どもがどのような種類の番組と関わっているのかが無視されていたりすることがあります。
スクリーンの影響について理解を深めるには、このような微妙なニュアンスの違いが重要となります。
「社会的発達の観点から有益なことをスクリーンから学べます。
逆に、社会的に有害で、認知的に役に立たないことをスクリーンから学んでいる場合もあるのです」
データの粒度が、子どもとスクリーンタイムに何が起こっているかを明らかにする鍵になるかもしれません。
「時間だけでなく、何をしているのか、誰と何をしているのかを把握することが、エビデンスベースを前進させるための基本です」
その方法はいくつかあります。
研究者の中には、家族と子どもの後をついて回り、子どもがいつ、どの画面に夢中になっているかを手作業で記録することでデータを集める人もいます。
また、子どものタブレットやスマートフォンにスクリーンセンサーを搭載し、YouTube Kidsやビデオゲームをいつ、どれくらいの時間見ているのかを記録する方法もあります。
さらには、ウェアラブル技術を使って、子どもたちがどのデバイスで画面を使用しているかを追跡する方法もあります。
現在進行中の研究では、3~5歳の発達障害のある子どもたちのスクリーンタイムを記録するために、ビデオを録画するウェアラブルカメラを使用しています。
現在、ストラッカーの研究チームは、人工知能を使ってこれらの録画を調べることに取り組んでいます。
最終的にはカメラの画質が十分に高くなり、画面に表示されるコンテンツの種類のパターンを調べ、教育的な画面時間と余暇の画面時間を分けることができるようにしたいと考えています。
ストラッカーの研究は、自閉症でない子どもたちを対象としたものですが、この技術は自閉症の子とスクリーンタイムの関連性を明らかにするのにも役立つと考えています。
スクリーンの普及によりホワイトハウス教授はこう言います。
「人類の歴史上かつてないほど異なった子育てをしていることは間違いありません。
この根本的な社会の変化が子どもの脳の発達に与える影響を疑うには、十分な理由です」
ロー助教授は、スクリーンタイムの修正可能性こそが、研究対象にふさわしいと言います。
子どもの環境は変えることができます。
さらに、保護者に家庭でのスクリーンタイム利用について質問することで、臨床医がスクリーンタイムを長く続けている要因を発見できることもあります。
フレイジャー教授はこう言います。
「スクリーンタイムと自閉症との因果関係を見いだせない研究が何年も続きました。
より強い推論、たとえば因果関係の方向性、ができるように今後は研究がより洗練される必要があります」
「自閉症」とテレビ、スマホ、ゲームそれらの画面を見る時間「スクリーンタイム」との関係は見られるものの、
A) スマホやゲームを長時間している → 自閉症(そうした症状)になる
B) 自閉症である → スマホやゲームを長時間してしまう
A とは言えず、 B であることも考えられる。(むしろ、こっち)
ましてや、スクリーンタイムと自閉症との関係自体も、自閉症(そうした症状)と「朝食をとらないこと」との関係よりもうすいという指摘です。
私は、幼いころからゲームやパソコンに触れてきて、一方で自閉症のうちの子はそうしたものとは一切関係がない(まったく興味をもたない)こともよく知っているので、正しい指摘だと思います。
何より、テレビ、スマホ、ゲームにはいろいろ大きなメリットがあると思っていますし。
(私の青春時代を思い出す「メガドライブミニ2」予約せずにはいられませんでした。異世界には行っていません)
ただ、何事もやりすぎには注意が必要です。子どもであればとくに。
(チャーリー)