- 自閉症の子供は将来どのような結果を迎える可能性があるのでしょうか?
- 自閉症の成人はどのような問題に直面するのでしょうか?
- 自閉症のある人々をどのように効果的に支援することができますか?
最近発表された米国疾病対策センター(CDC)のデータによれば、小児期の自閉症率は、CDCが2000年にデータの追跡を開始して以来、最高水準にあることがわかりました。
2000年には150人に1人だったのが、2018年には44人に1人、つまり米国の子どもの約2.3パーセントがが自閉症スペクトラム障害と診断されています。
男の子については、その比率はほぼ4人に1人にまで上昇します。
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、他者との関わり方、コミュニケーション、学習、行動などに影響を及ぼす神経学的・発達的な障害です。
この障害は、コミュニケーションや他者との交流の難しさ、制限された興味や反復的な行動、学校、仕事、その他の生活領域での機能に影響を与える症状によって特徴付けられます。
自閉症はあらゆる民族や社会経済集団に影響を及ぼしますが、有色人種は診断される頻度が少なく、年齢も高い傾向にあります。
また、自閉症患者の約3分の1は知的障害を持ち、4分の1はIQが境界領域(100を平均として71〜85の間)にあるとされています。
自閉症の専門家である米カリフォルニア大学サンフランシスコ校精神・行動衛生学部およびUCSFワイル神経科学研究所のソマー・ビショップ准教授に、自閉症と人生の転帰に関する最新の研究、およびUCSFの神経多様性集団に対するケアアプローチについて話を聞きました。
■ 自閉症の人が増加する中、医療従事者はどのように自閉症の子どもや大人をサポートすればよいのでしょうか?
自閉症は実に多様な症状なので、彼らをどのように支援するかを考えるとき、その人の自閉症症状がどのように現れるかを知ることが重要です。
成長するにつれて、ある症状が消え、別の症状が現れるかもしれません。
例えば、反復的な運動行動は幼少期を過ぎると減少しますが、思春期や成人期には不安や抑うつに取って代わられるかもしれません。
自閉症の中核的な欠陥の1つである社会的コミュニケーションの困難さは、その人の年齢、住んでいる場所、どんな家庭か、IQや言語レベルなど、多くの個人変数に影響される可能性があります。
2歳児でも20歳の人でも、親御さんからよく受ける質問のひとつに、「うちの子が大きくなったらどうなるんでしょうか」というものがあります。
その答えは、予測できることとできないことがあります。
その答えの一部は、言語障害や認知障害の程度にありますが、すべてではありません。
ですから、手助けをするためには、その時々の最大の課題がどこにあるのかを知り、それに対処する手助けをする必要があるのです。
言語療法士、行動療法士、作業療法士、神経科医など、複数の専門家が関わることになるでしょう。
■ 自閉症の成人について、研究はどのようなことがわかっているのでしょうか?
その前に、成人の研究、特に縦断的な研究の多くは、30~40年前に診断された子どもたちを対象としており、現在診断されている子どもたちとは全く異なるグループであることを理解することが重要です。
現在、子どもたちはさまざまなサービスを受けることができますから、導き出せる結論は限られています。
しかし、非言語的コミュニケーションや社会的交流・友人関係の難しさなどには、違いなく障害が見られます。
また、既存のデータによると、自閉症の人たちは、大人になってからの機能的自立の割合が最適値よりもはるかに低く、就職や自立した生活、有意義な社会的関係を築く能力など、従来の成人の成功のマイルストーンの割合が低いことが示唆されています。
自閉症の若者は、知的障害や学習障害のある成人よりも、お金をもらって働くことが少なく、成人向けデイサービスや学校などの日中の活動も少ないことを知り、多くの人が驚きます。
米国では自閉症の成人の25パーセント近くが、何もせずに家にいるだけなのです。
■ 自閉症の成人は、他の障害者に比べて日中の活動が少ないという事実をどう説明するのですか?
言語能力や認知能力の高い自閉症成人のグループは、知的障害者に比べて、大人になってからの地域サービスの利用が少ないことが多いということもあります。
また、このグループはうつ病になることが多く、自閉症成人の約半数は臨床的にうつ病であり、自閉症成人の自殺率は一般の人に比べて、8〜10倍になります。
失業は自閉症の成人のうつ病の大きな原因となっていますが、これらの成人は社会的障害のために仕事を続けるのが難しいことが多いのです。
■ このような厳しい統計を前にして、希望を見出す余地はあるのでしょうか?
私たちは自閉症を個人的な要因で語る傾向がありますが、分野やコミュニティとして、家族やコミュニティの支援源(支援団体、社会グループ、教会など)など、個人の外で起こるすべてのことについて考え始めるべき時だと思います。
過去20年間の成人の研究で、最も希望に満ちた研究のひとつに、自閉症の成人の半数が、積極的な社会生活と雇用の面で、良好または非常に良い結果を得たというものがあります。
その研究で対象となった自閉症の人は米ユタ州の末日聖徒イエス・キリストのコミュニティに属していたので、彼らをサポートするコミュニティが周囲にあったのです。
週に一度、自分のことを気にかけてくれる人たちがいる場所を提供するソーシャルグループやコミュニティグループは、自閉症の人の人生を変えることができます。
自閉症の人がもっと友達と遊んだり、社会的な交流の機会をもてることを増やしてあげましょう。
そして同時に、人によっては量が重要かもしれませんが、社会的交流という点で、その人が何を望んでいるかを考える必要があることも認識してください。
もうひとつは、多くの点で非常に優秀な人たちが、有給の仕事を持たないとしたら、それがうつ病と関連しないと考えることはできないでしょう。
ですから、どうすればその人にとって意味のある仕事ができるようになるのか、個人の枠を越えて考える必要があるのです。
たとえその仕事が好きなものでなかったとしても、収入を得ること、自分の生活に貢献できることは、意味のあることです。
ある研究では、高校時代に働いていた自閉症の成人は、大人になってからの就職率が高いという結果が出ています。
高校時代に働く練習をする機会を探すのは良いことだと思います。
■ UCSFでは自閉症の人へのケアにどのように取り組んでいますか?
自閉症の人が直面する大きな問題のひとつは、学校制度や小児医療制度から外れて年齢を重ねると、サービスや治療が低下してしまうことが多いということです。
それは、突然何のサポートも受けられなくなる「崖っぷち」のようなものだと言われています。
UCSFではライフスパン・ケア・センターとして、ライフコース全体にわたってケアを提供しています。
つまり、一度UCSFでケアを受けた人は、大人になってからも含めて、その人をずっと見守っていくのです。
通常、自閉症の人たちのケアは断片的ですが、そうすることで、私たちの行っているケアが質の高いものとなります。
また、ご家族や自閉症の方にとって大きな手間と負担となりうるケアのコーディネートもお手伝いしています。
(出典:米カリフォルニア大学サンフランシスコ校)(画像:Pixabay)
うちの子はこの春から、特別支援学校を卒業し生活介護の福祉施設に通い始めました。
行くところ、所属できるところがあることは、本人だけでなく家族も大きく助けられます。
先人たちが築いてくださった日本のシステムには心から感謝しています。
(チャーリー)