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腸内細菌が自閉症の原因にはならない。偏食の結果、違うだけ。

time 2021/11/13

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

腸内細菌が自閉症の原因にはならない。偏食の結果、違うだけ。
  • 自閉症と腸内細菌の関係性は本当にあるのか?
  • 自閉症の子どもたちの食事制限はマイクロバイオームに影響するのか?
  • 自閉症スペクトラムの子どもたちに対するマイクロバイオーム治療の有効性はあるのか?

自閉症スペクトラムの人たちは、腸内に生息する細菌のコミュニティ(マイクロバイオーム)が一般の人たちとは異なっているのではないかと考えられています。

そのため、それら腸内細菌が自閉症を引き起こすのではないかと推測する研究者や医師もいます。
しかし、本日、Cell誌に掲載された私たちの新しい研究は、この説を覆すものです。

今回の研究では、腸内細菌の違いが脳の発達に影響を与えるのではなく、腸内細菌の変化は、食事制限や「偏食」によって引き起こされることが示唆されました。

自閉症の子どもたちは、感覚が敏感で、興味の対象が制限されたり、繰り返したりするため、制限された食事をすることが多くなります。
一部の食べ物に強いこだわりを持つ子もいれば、味や匂い、食感に不快感を覚える子もいます。

マイクロバイオームが自閉症と関係しているという主張を聞いたことがあるかもしれません。
その内容は、マイクロバイオームが「因果関係」を持っているかもしれない、マイクロバイオームの「治療法」が自閉症の行動を変えるかもしれないというものです。

自閉症の人の腸内細菌が注目されるようになったのは、自閉症スペクトラムの人たちは便秘や下痢などの腸内環境の問題を経験しやすいという観察結果からでした。
さらに、自閉症スペクトラムの子どもたちは、腸内に生息する細菌の組み合わせが異なることも示唆されました。
これらの興味深い関係に触発されたマウスやラットを使った研究でも、マイクロバイオームが行動の違いを引き起こす可能性を示唆するものがありました。

しかし、このような研究は誤った方向に進んでいると考えます。
すべての研究結果を総合すると、マイクロバイオームと自閉症との関連性を示す証拠は非常に一貫性がなく、多くの研究は科学的設計に大きな問題があります。
また、自閉症はマウスには存在しないため、マウスを使った研究をヒトに関連付けることにも問題があります。

このように科学的には不確実性があるにもかかわらず、マイクロバイオームと自閉症をめぐる宣伝は勢いを増し続けています。
この勢いの中で、糞便中のマイクロバイオータの移動や食事療法など、マイクロバイオームを変化させることで自閉症の子どもたちをサポートすると主張する、思わせぶりな治療法も登場しています。

これらの「治療法」は、希望に満ちていますが、有効性と安全性のエビデンスに乏しく、それぞれにリスクと多額の費用がかかります。

私たちはオーストラリア自閉症バイオバンク、およびクイーンズランド州の双子思春期脳プロジェクトと協力し、自閉症スペクトラムの子どもたちとその家族の膨大な臨床データを用いて分析しました。

自閉症スペクトラムの子ども99人の便サンプルから採取した微生物DNAを、自閉症ではない子どもの2つのグループ(兄弟姉妹51人と血縁関係のない子ども97人)と比較しました。

また、自閉症スペクトラムの子どものマイクロバイオームに影響を与える要因を包括的かつ広範に調べるために、子どもの臨床情報、家族情報、食生活を含むライフスタイル情報も調べました。

その結果、マイクロバイオーム全体の測定値およびマイクロバイオームの多様性と自閉症の関係を示す証拠は見つかりませんでした。

600種以上の細菌のうち、自閉症との関連を示したのは1種のみでした。
これまでに自閉症との関連が報告されている他の細菌群(例えば、プレボテラ属)については、証拠が見つかりませんでした。

その代わりに、自閉症スペクトラムの子どもは「偏食」の傾向が強いことがわかりました。
これは先行研究の報告と同様で、興味の制限や感覚の過敏さなど、自閉症に関連する特定の特徴と関連していました。

また、偏食家はマイクロバイオームの多様性が低く、便が細くなる(下痢をしやすくなる)傾向があることもわかりました。
自閉症スペクトラムの子どもたちは、便秘や下痢、腹痛などの消化器系の問題を抱えている可能性が高いことが以前からわかっています。

遺伝子情報からも同様のことがわかりました。
遺伝子情報は、調査結果に影響を与えている可能性のある他の環境要因を除外するために非常に重要です。
自閉症と食事の好みの偏りは多様性に欠ける食生活に対応していましたが、マイクロバイオームとは直接関係はしていませんでした。

全体として、今回の結果は、腸内細菌が自閉症を引き起こすという見解を支持するものではありません。

つまり、自閉症に関連する特性や嗜好は多様性に乏しい食事と関連し、その結果、多様性に乏しいマイクロバイオームにつながっているのです。

今回の研究結果は、自閉症の人たちにとって重要な意味をもちます。

第一に、便移植などの自閉症に対するマイクロバイオーム治療は、慎重に考えるべきです。
今回の研究結果は、これらの治療方法が効果的である可能性は低く、益よりも害が大きいことを示唆しています。

今回の研究では、自閉症スペクトラムの子どもたちの食事の重要性にも注目しました。
オーストラリアでは、子どもや若者の食生活の乱れは公衆衛生上の大きな問題であり、子どもの健康や発達、肥満などの健康状態に重要な影響を及ぼします。

とくに自閉症スペクトラムの子どもを持つ家族に対しては、効果よりも害の方が大きいと思われる流行の「療法」に頼るのではなく、食事の時間に家族をサポートするためにもっと努力する必要があります。

豪クイーンズランド大学 クロエ・ヤップ
西オーストラリア大学テレソンキッズ研究所 アンドリュー・ホワイトハウス
豪クイーンズランド大学 ジェイク・グラッテン

出典:豪THE CONVERSATION)(画像:Pixabay

自閉症の症状を改善するものとして「便移植」がここ最近注目を集めています。

痛みを与えることもないので、将来うちの子がかかえる困難を軽減してくれる良い方法になるかもしれないと私も期待をしていましたが、

この研究結果を知ると、やっぱりね、という気持ちにもなります。

腸の細菌状態と自閉症の症状にはやはり距離を感じますから。

しかしこうして、反対の結果を示す研究も出てくることで、確かな方向にますます進んでいくのが科学です。

その結果の医療です。

だからこそ、確かな医療に勝るものはありません。

さらなる研究が進むはずです。

「便移植」で重症の自閉症の子が47パーセント減。研究結果

(チャーリー)


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