- 1. 自閉症や知的障害を持つ人が安全な環境で生活・働く場所を見つけることは可能か?
- 2. パンデミックの際、自閉症や知的障害を持つ人たちが直面した課題は何だったのか?
- 3. 自閉症や知的障害を持つ人たちが生活や仕事で必要なサポートや環境は、どのようなものが適しているのか?
フルスペクトラム・ファームでアートクラスが開催されています。
参加者はリサイクルされた雑誌や新聞、絵の具やマーカーを使ってコラージュを作っています。
参加したナッシュは全員にプレゼントを持ってやってきました。
自由にハグをしてくれます。
母親が特許を取ったという自作の火起こし器を配ると、ナッシュは自分の座りたい場所を決めてコラージュを作り始めました。
ナッシュが小学生の頃、彼の母親と他の6人の自閉症スペクトラム(ASD)の男の子の母親たちが、ASDの子どもたちのために特別な教室と学校生活をデザインしました。
ナッシュの母ジェリー・ファイファーは、こう言います。
「私たちはとても親しくなりました。
4人のお母さんと、当時ナッシュと一緒に働いていた女性の4人で、何かしたいと思ったんです」
そして、自閉症スペクトラムの人たちが住み、働ける場所を作ることを考えました。
農場がそれに最も理にかなったものでした。
というのも、彼らは米ノースカロライナ州西部の美しい農村地帯に住んでいたからです。
フルスペクトラム・ファームはその農場コミュニティを通じて、有意義な仕事やレクリエーション、コミュニティへの参加を通じて、自閉症の人の自立を支援しています。
20年の歴史の中で農場は成長し、進化してきました。
自閉症の人たちが安全な環境で生活し、働き、探求できる場所であり続けています。
有機農法と自然工芸に重点を置くことで、創造性を自由に発揮し、自然界とのつながりを持ち、木工、陶芸、織物、有機栽培の野菜や花の栽培と販売など、生涯にわたる生活と仕事のスキルをここで身につけることができます。
敷地の周りには、誰でも参加できるウォーキングコースがあります。
クライアントやスタッフは、農場で飼っている犬と一緒にここを歩いています。
敷地内には、新しい建物や常設の陶芸スタジオなどの建設も計画されています。
エリン・マクマナスは、フルスペクトラム・ファームのファーム・ディレクターとして約7年間勤務し、毎週のプログラムの調整、特別イベントの企画、寄付金の管理、地域社会との関係構築、農場を利用する家族への支援を行っています。
フルスペクトラムに入社する前、マクマナスは教育機関で働いていました。
彼女のキャリアを変えたのは、一人の生徒だったと言います。
この生徒は自閉症をかかえていました。
マクマナスはその生徒の夏休みや卒業後について考えました。
「学校を通じたサポートシステムだけでは十分ではありません。
これまでそうした生徒たちが挫折してしまうのを目の当たりにしました。
その中でこの農場を見つけました。
私も自閉症の人たちのために取り組みたいと思いました」
農場では、人工的な刺激が環境から取り除かれています。
しかし、虫、熱、土、動物などの自然の刺激は十分にあり、自閉症の人たちの背中を押し続けることができる、とマクマナスは言います。
自然が予測不可能であっても、自閉症の人たちが成長するために必要なこととして、農場はかなり規則的なルーチンで運営される必要があります。
ニワトリには毎日水をやり、卵を集め、庭の草取りをし、熟した野菜は特定の曜日に収穫しなければなりません。
「私たちと一緒に仕事をしてくれる人たちにとって、これらの要素はすべて信頼できる日常生活の一部なのです」
キャロル・ウェストは、フルスペクトラム・ファームの管理者です。
彼女は、フルスペクトラムの顧客が作業をするための庭を管理しています。
この農場には、種を蒔くための温室や、毎日卵を集める鶏舎もあります。
この農場から定期的に野菜や花を購入しているレストランが周辺にいくつかあります。
「ここは私にとってのサンクチュアリでもあるんです」
そうウェストは言います。
ブリット・デイビスは、アートインストラクターです。
彼女はセラピスト、アートカウンセラー、アーティストの資格を持っています。
「アートを作る過程に、大きなメリットがあります。
アートを作るのに正しい方法も間違った方法もないと私は伝えています。
授業を受けるだけで、心が落ち着き、つながりを感じることができます」
デイビスは、同じクラスで同じ材料を使って、いろいろな人がいろいろな作品を作っているのを見るのが好きです。
「学んだという実感が得られることにも、メリットがあります」
パンデミックの前は、フルスペクトラム・ファームでは、利用者が作った作品を販売していました。
「彼らが自分の作品を売ってお金を稼ぐことができることは、本当に有益なことでした」
パンデミックは、自閉症スペクトラムの人たちにとって、特に大きな問題となりました。
自閉症スペクトラムの人々の多くは、予測可能な環境や日課を好むことが多く、慣れ親しんだ構造や好みが変わることに苦痛や困難を感じることがあります。
ライフスタイルや日常生活の大きな変化が苦手ということは、パンデミックで孤立した生活に適応することも大変です。
そして、その生活から抜け出してパンデミック以前の日常パターンに戻ることも大変だということです。
フルスペクトラム・ファームが支援している自閉症の人たちの多くは、基礎的な健康の問題も抱えており、コロナウイルスに感染すると、より一層危険な状態になります。
パンデミックの際、自閉症の人を持つ家族にとって、介護者の存在も大きな問題でした。
フルスペクトラム・ファームでは、親たちが仕事を続けられるように、外部から介護者を雇っていました。
しかし、パンデミックの際には、その状況が一変しました。
介護者の確保が難しくなりました。
そのため、自閉症スペクトラムの患者は、家族に介護してもらうことになりましたが、その家族は高齢者が多く、コロナウイルスに感染する高い危険性がありました。
「パンデミックや操業停止の後、お客様に戻ってきていただくのに大変苦労しました。
例えば、いつも工作活動に来てくださるお客様が2名いらっしゃいます。
私はここで7年ほど働いていますが、彼らはいつも来ていました。
しかし、今は再び集団生活を送ることには抵抗があるようです」
いまだに家から出ようとしません。
マクマナスは画材を持って訪問し、今は庭で活動をしています。
「私のキャリアの中でも、最大級の混乱だったと思います。
私はいつも言っているのですが、誰もがパンデミックの影響を受けていますが、とりわけ自閉症の人たちは大きな影響を受けています。
家族から聞いた話では、サービスが受けられなかったために、うつ病や不安症などの症状が出ているそうです。
日常生活ができなくなり、そしてそこから立ち直るのがとても困難なことでした。
自閉症の人たちは、すごく時間がかかっています」
フルスペクトラム・ファームはすべての年齢層にサービスを提供しています。
パンデミック前には、子ども向けのサマーキャンプや放課後のプログラムを行っていました。
今は安全上の理由から、再開されていません。
農場に戻ってくるまでの道のりは、人によって異なります。
マクマナスはこう言います。
「私の目標は、彼らに少しずつ前進してもらい、彼らの準備ができたら、さらに少しずつ前進してもらうことです」
パンデミックの間、大きく依存していたボランティアの人たちも減りました。
安全性を保つために、誰でも農場に来て手伝うことができるボランティアの公開日をやめました。
再開しましたが、現在は感染のリスクを減らすため、ボランティアにはワクチン接種が義務付けています。
グレッグ・ドージャーは、フルスペクトラム・ファームでボランティア活動をしている大学生です。
秋晴れの午後、彼は母屋の玄関ポーチで、スタッフや長年の顧客であるエミリーとベスと一緒に、美術の授業に移る時間までおしゃべりをしていました。
ドージャーがこの農場でボランティア活動を始めたのは、授業で必要だったためです。
しかし、その授業はとっくに終わっているが、ドージャーは農場に来るのを止めません。
ここでの仕事を楽しみ、フルスペクトル・ファームの一員として活動しています。
「儒教のために必要なこと以上のものになりました。
エミリーやベスと一緒にいると、彼らの生活に変化をもたらしているのがよくわかります。
人生に大きな影響を与えていることがわかります。
私の目を開かせてくれて、私をここにもっと来たいと思わせたのです。
人の違いを理解し、私たちがどのように生きているのか、私たちはみんな違うけれど、同時にみんな同じなのだということを理解するようになりました」
(出典・画像:米Smoky Mountain NEWS)
ご本人や家族を幸せにしている農園。
実現するのは、本当に簡単なことではありません。
だからこそ、こうした農園を作られた、続けられている方たちを心から尊敬します。
知的障害の子をもつ母親たちが起業した移動式のコーヒーショップ
(チャーリー)