- 自閉症のサブタイプ分類は科学的に妥当か?
- サブタイプ分類による偏見や疎外感は避けられるか?
- サブタイプ分類に基づく個別支援の有用性は確信できるか?
自閉症の人の特徴や能力の類似性に基づいて、自閉症をサブタイプ(細分化)することに、賛否両論があります。
サブタイプには、固定観念や疎外感を想起させるような否定的な意味合いもあるためです。
何十年もの間、自閉症スペクトラムは、アスペルガー症候群や広汎性発達障害(特定不能)などのサブタイプの集まりであると定義されていました。
しかし、これらのサブタイプの間には、臨床的に明確な区別がなく、また、スペクトラムの人々の間に内在する多様性を十分に捉えることができませんでした。
そのため、臨床医が診断を下す際に参照する米国の「精神疾患の診断・統計マニュアル」の最新版(第5版)では、2013年にサブタイプの使用が廃止されました。
とはいえ、サブタイプ分けには正当な理由がある場合も多くあります。
例えば、特定の遺伝子変異を持つ人たちのサブタイプを特定することは、その遺伝子変異が特定の医学的問題と関連している可能性があるため、有用です。
また、サブタイプ分析は、特定のサブタイプが存在しないことを示すためにも使用されます。
あるいは、特定の種類のサポートから最も恩恵を受ける人を特定するのにも役立ちます。
これらの理由から、サブタイプ分析を行うことは断固としてやめるべきではありません。
しかし、意味のある自閉症のサブタイプを発見することに研究は集中すべきです。
自閉症のサブタイプの数と性質について科学者の間でコンセンサスを得るために、私たちは自閉症のサブタイプ分類に関する文献を系統的にレビューしました。
2001年以降に発表された論文のうち,統計的手法または機械学習手法を用いて自閉症の人のサブタイプを発見したものに限定して行いました。
これらのサブタイプ分けの手法は、データに基づいて行われているものです。
研究者たちは、特定の数のサブタイプを探そうとしたり、サブタイプがどのようなものかを事前に指定することなしに、データ分析から導きました。
その結果、基準を満たした論文は156件でした。
そのうち82パーセントの論文が、2つから4つのサブタイプをデータから導いていました。
しかし、これらのサブタイプには、自閉症特性や感覚過敏の質問票のスコア、言語能力のテスト、ホルモンレベル、顔の特徴のパターンなど、非常に多様な尺度が含まれており、この多様性のために、コンセンサスが得られず、確固とした結論を導き出すことができませんでした。
また、これらの研究の多くでは、サンプルに含む変数があまりにも異なったものであるため、研究者が同じサブタイプを異なる角度から見ているのか、それとも毎回異なるサブタイプを発見しているのかを判断することもできませんでした。
さらに、サブタイプの結果を検証し、その主張を裏付けるための追加的なステップを踏んでいる研究が少ないことにも気づきました。
このように、体系的な検証が行われていないために、有用性が疑われる自閉症サブタイプが急増していると私たちは結論づけます。
とくにサンプル数が少ない場合や、結果が明確でない場合には、研究者は体系的に結果を検証し、さらに裏付けとなる証拠を提示することを私たちは薦めます。
“Clinical Psychology Review”誌掲載された私たちの論文では、サブタイピング分析に説得力のある裏付け証拠を提供するための7つの方法を紹介しています。
また、研究者が使用できる「サブタイピング検証チェックリスト」も提供しています。
これらの検証戦略は、より多くの分析、より多くの測定、より多くの参加者を必要としますが、サブタイピングの結果をより解釈しやすく、価値のあるものにすることができます。
検証の典型的な方法は、全く別で行う、再現実験です。
募集、測定、分析の手順全体を、全く別の参加者で行うものです。
しかし、私たちがレビューした論文のうち、そうしたことを行っているのはわずか9パーセントしかありませんでした。
私たちがレビューした論文のほとんど(88パーセント)は、外部検証と呼ばれる戦略を用いています。
これは、最初の分析では使用されなかった追加の変数についてサブタイプを比較するものです。
例えば、あるサブタイプが他のサブタイプよりもQOL(生活の質)が高かったり、併存する診断の数が少なかったりすることを発見することが外部検証になるかもしれません。
しかし、追加の変数がどのように結果を検証するのか、あるいは何が結果を無効にするのかを明示している論文はほとんどありませんでした。
例えば、あるサブタイプが他のサブタイプよりも高齢であったり、女性が多かったりした場合、研究者がこれらの人口統計学的変数に着目した仮説や根拠を明示していなければ、そのような知見がサブタイプの妥当性に及ぼす影響を解釈することは困難です。
このような状況を改善するために、私たちは2つの提案をします。
まず、研究者には、自分の研究でどのような検証戦略を用いたか、また、それらのアプローチを選択した理由を説明していただきたいと思います。
望ましいのは、研究者が検証戦略をオンラインで事前に登録し、何が結果の検証および無効化を構成するかを説明することです。
第二に、より重要なこととして、研究者にはサブタイプ分析の目的を明確に示すことを求めます。
サブタイプを研究する理由はたくさんあります。
この種の研究にまつわる不協和音の多くは、サブタイプのラベルが再定義されたときに生じるようです。
その場合、これらのラベルは、誰かの運命や価値を決定する変更不可能な特徴と見なされるようになるかもしれません。
私たちは、このようなことがサブタイプ研究の目的になることはほとんどなく、またそうすべきでもないと主張します。
むしろ、この種の研究の最終的な目標は、自閉症の人たちの支援を改善することであるべきです。
オランダ・アムステルダム大学の臨床神経心理学 ヒルデ・ゴーツ教授
同大学研究員、レオ・カンナーハウス自閉症クリニック ジュースト・アゲリンク・ヴァン・レンテルゲン
発達障害、自閉症「スペクトラム」障害、それぞれの人ごとに異なり、多様です。
完全に一人ひとり個別に内容を変えて行える支援は現実、限られてしまいます。
なのでもう少し、細分化した分類を設けるべきという考えはよくわかります。
しかし、一方でその分類ができることで、偏見を持たれやすくなるレッテルとなってしまうことも。
(チャーリー)