- 子どもたちとの夕食の時間はどんな状況?
- 自閉症や感覚処理障害をもつ子どもたちにとって食事の時間はどんな困難をもたらす?
- 自閉症や感覚処理障害を持つ子どもの食事の改善にはどんな方法が効果的か?
小さな子どもたちとの夕食の時間は、いつも大混乱です。
誰かが「嫌い」と言っているようなレベルではありません。
食べ物が部屋中に飛び散り、チキンの切り方が悪いと泣き叫ぶような状況です。
90パーセントの子どもはいろいろ食べられるようになりますが、感覚処理障害や不安症、自閉症をかかえる子を持つ親にとっては、ずっと続く困難となります。
自閉症の子の約70パーセントは食べ物に過敏に反応します。
8歳のリアム・マクレランドもその一人です。
「リアムはかなり早い段階で自閉症とADHDと診断されました。
早期療育を始めたおかげで、今ではかなり良好な状態になっています。
友達と走り回ったり、プレイステーションで遊んだり、水泳のレッスンを受けたりと、他の子と変わらない8歳の子どもです」
そう、母親のケイティは言います。
しかし、夕食の時間になると、厄介なことが起こります。
「夕食の時間は、それは悪夢のようです。
料理を作り始めるときから、なんでこんなものを作っているんだと言い出したりします」
イライラするような戦いですが、うるさい子の食生活を改善し、食事の時間をストレスのないものにするために、親にできることがあります。
医師のピリーヤ・アレキサンダーはこう言います。
「初めての食べ物を与えるときには、時間をかけて、プレッシャーをかけずにすることで、多くの子は食べることができるようになります。
研究によれば、自閉症の子の場合はもっとたくさんの時間がかかるかもしれません。
ですが、10回もチャレンジすれば、食べられるようになるはずです。
しかし無理をさせて、もう一口というような言い方をしても、効果がないことがわかっています。
食べ物に触れること、食べ物を身近に置くこと、食卓に並べることが大切です。
また、お手本を示すことも大切です」
そして、そのための最良の方法のひとつが食べ物を楽しくすることです。
一般的には勧められることではありませんが、食べ物で遊ぶことは、子どもたちが新しい食べ物について学び、発見するための素晴らしい方法となります。
また、感覚的な問題をかかえ、食べることをを嫌う子どもたちにとっては、特に有益であるとアレクサンダー医師は言います。
食べ物で遊ぶことで、親しみがわき、食べなければならないという不安やプレッシャーが軽減されるということです。
リアムの家庭について、アレクサンダー医師はこう言います。
「リアムが好きな食感、色、形のものを用意して、リアムが簡単に遊べるようにすることを提案します。
これは、食べなければならないというプレッシャーを与えず、食べ物で遊ばせるのです。
不安が増大することなしに、そうすることで安心できます」
自閉症や感覚処理能力に問題のある子どもの場合、食べ物遊びは療育として行い、その後、家庭でも同様にするのが理想的です。
小児栄養士のフランチェスカ・マルティーノはこう言います。
「家庭での食べ物遊びは、通常、食事の時間以外に行うことをお勧めします。
なぜなら、食べ物遊びと食事の時間では目的が異なるからです。
家族での食事の目的は、子どもに食事を与え、十分な栄養を摂取させることです。
療育や家庭での食事遊びの目的は、食べることを前提とせず、新しい食べ物に触れることです。
そうしているときに子どもが食べ物を食べたり味わったりすれば、それはおまけだと思ってください」
アレクサンダー医師のもと、リアムは果物と串を使ってロケットを作ります。
パスタソースで絵を描いたり、野菜を使ってピザに顔を作ったり、マッシュポテトとトマトソースで火山を作ったりすることもあります。
大切なのは、楽しくすることと、子どもに食べることへのプレッシャーを与えないことです。
多くの親と同じように、母親のケイティーと父親のジョンも野菜や果物を食べさせるのに苦労してきました。
実際ここオーストラリアでは、子どもの90パーセントが1日に推奨される量の野菜や果物を食べていません。
アレキサンダー医師は、「虹を食べよう」コンテストを開催します。
これで、リアムの野菜や果物嫌いを少なくしようとしています。
虹の形に色分けされた果物や野菜が入った表を出し、リアムに好きな食べ物を指さしてもらいます。
リアムは緑のブドウ、赤のリンゴ、黄色のバナナを選びました。
「おなかの中には、虹の3色しか入っていないね」
そう、アレクサンダー医師は言います。
「誰が一番多く虹をお腹に入れられるか、虹の競争をしてみましょう」
リアムは喜んでその挑戦を受け入れました。
わずか6週間後には、リアムは赤ピーマン、ニンジン、エンドウ豆、トウモロコシを誇らしげに食べていました。また、母親のケイティは、家族の好物であるソーセージロールにも野菜を忍ばせました。
「今週は、じゃがいもとかぼちゃも食べました」
そう、ケイティは言います。
「それは昨日の夜のことです。
ジャガイモとカボチャを食べたんです」
父のジョンは言います。
「とはいえ、大さじ1杯です。
しかしこうして、少しずつでも食べていきたいと思っています。
リアムは虹色を作ったことをとても誇りに思っています」
また、別の方法もあります。
この方法は、親が子どもに何を、いつ、どこで食べさせるかを決め、子どもが食べるかどうか、どれだけ食べるかを決めるというものです。
つまり、親が率先して食事を与えることで、子どもは安心して食べることができるというものです。
マルティーノ小児栄養士はこう言います。
「この方法が有効なのは、親と子が食事や食事の時間に信頼関係を築くことができるからです。
食事の際のプレッシャーやストレスを軽減し、子どもが食事に必要な許容範囲内に収まるようにします。
子どもが自分の食事をある程度コントロールできるようにすることで、食べ物との関係を前向きに、長く保つことができます。
また、子どもが食べることに自信を持ち、自立することで、空腹や満腹のサインを理解し、親が子どもが十分に食べたかどうかを判断しなくても、毎食どのくらいの量を出せばよいかを示すことができます。
こういったコンセプトは、自閉症の子どもや落ち着くことができない子どもだけでなく、すべての子どもに有効ですが、こういった子どもにはより多くのサポートが必要であることがよくわかります」
親が新しい食べ物を紹介するときは、子どもの目の前ではなく、テーブルの中央に食べ物を置くのがいいとマルティーノ小児栄養士は言います。
「好きではない食べ物に触れなければならないというプレッシャーがない状態で、より多くのものに触れることが、通常、最良の結果をもたらします」
食材に触れることが重要なので、家族で一緒に食事をすることで、食に問題をかかえる子どもたちにも大きな変化をもたらすことができます。
「全員が同じ食事をすることが可能であれば、それが望ましいのですが、必ずしもそうしなければならないわけではありません。
家族で食事をする際の主な目的は、さまざまな食品に積極的に触れることと、他の食品も安全に食べられることを子どもに示すための社会的なロールモデルを作ることです」
また、食事の時間を計画的に過ごすことは、自閉症などの子どもだけでなく、すべての子どもにとって重要です。
「食事をする場所についてのルールは昔から変わっていません。
気が散らないように、そしてできれば一人にならないように、食事をするべきです。
研究によると、空腹感や満腹感を理解する能力にも影響を及ぼす可能性があるからです」
その他にも、一緒に料理をしたり、一緒に買い物をしたりすることで、食べ物に触れる機会を増やすことができることをリアムの両親が明らかにしています。
「リアムは私たちと一緒に買い物を楽しんでいます。
リアムはどんな野菜が欲しいか教えてくれますし、野菜を意識するようになりました。
先日、スーパーで買い物をしていたら、『ママ、これはアスパラガスだよ』と言っていました。
アスパラガスを一緒に食べたことはありませんが、以前は全く興味を示さなかったのに、喜んでアスパラガスに近づき、触って、見て、話して、それが何であるかも知っていました」
父親のジョン、母親のケイティは、食事の時間にはまだ少しストレスを感じることを認めていますが、これまでの進歩に満足しています。
「私たちが実感しているのは、現実的に達成できたということです。
息子は少しずつ改善してきました。
食事の時間が、以前より快適になったのは確かです」
(出典・画像:豪abc)
うちの子も小さな頃は食べるものが限られていましたが、今では何でも食べてくれます。
ただ、食べながら歩き回って、ときどき口から出したりするので掃除は大変です。
(チャーリー)