英国自閉症協会の調査によれば、英国では発達障害である自閉症の成人の77パーセントが就業を希望していますが、実際にフルタイムで仕事をしているのはわずか16パーセントです。
社会は、自閉症スペクトラムの人たちの個性を受け入れようとしていますが、大人や子どもの自閉症の人たちが持っている優れたユニークな特性を理解するには、まだ長い道のりがあるようです。
論理的思考に長け、予測可能なことを好む自閉症スペクトラムの人たちにとって、コーディングやプログラミング、ゲーム制作は、大人にとっては雇用の機会、子どもにとっては学習の機会となることが研究によって証明されています。
実際、自閉症スペクトラム(ASD)の子どもたちは、論理的思考力があり、予測可能性を好み、視覚的に学習するため、デジタル関連の能力に関しては、同級生と競争するだけでなく、むしろ上回っている傾向があります。
自閉症の子どもたちは、通常、左脳が優位であるため、コンピュータサイエンス、特にコードを書くことに自然と惹かれていきます。
その結果、自閉症の子どもは、データベースの更新、コーディング、分析など、正確さと繰り返しを必要とする仕事で優れた能力を発揮する可能性が高くなります。
2016年、金融サービスのグローバルリーダーである「J.P.モルガン(JPM)」は、自閉症スペクトラムの社員やインターンを調達するための専門キャンペーンを開始しました。
同社の「Autism at Work Program」のグローバル責任者であるアンソニー・パシリオは自閉症の人たちがコーディングや品質保証テストの職務をこなすのに必要な、重要な特性をもつことを認識していました。
アンソニーは、成果を簡単に測定できる職務において、JPMはスペクトラムの人たちがそうでない人たちに比べて「かなり優れている」ことを発見したといいます。
これは、ASDの人たちがデジタル技術に慣れ親しんでいるだけでなく、適切な環境で適切なツールを使うことで優れた能力を発揮していることを示す一例です。
「コード・ニンジャ」では、自閉症の子どもたちが毎週のセッションで成長し、雇用される際には役立つスキルを身につけることができるという考えを持っています。
このプログラムでは、生徒たちがチームの一員として働き、楽しくリラックスした環境で共同作業をすることで、コミュニケーション能力やグループ環境を扱う能力を高めることができます。
そして、このプログラムが単に自閉症の子どもたちの特性に適しているというだけでなく、子どもたちの可能性と全体的な幸福感を高められる場所になっています。
自閉症の子どもたちは、社会的な交流が苦手です。
そして、光や音などの刺激に過敏に反応することもあります。
そのため、自閉症の子どもたちが参加するセッションでは、スタッフはコーディング道場の既存の環境に可能な限りの調整を行います。
いくつかの店舗では、特別な教育を必要とする生徒のための専門的なセッションを行い、不要なバックグラウンドノイズを取り除いています。
また、自閉症の子どもたちは、一連の流れや予測可能性によく反応し、予測できる結果が得られる活動に安心感を覚えます。
そのため、コンピュータ画面のフィルターやコード化されたコマンドの自動実行によって、自分の行動をコントロールできるようになることに価値を見出すのは当然のことといえるでしょう。
コンピュータ・プログラミングやゲーム開発は、学生が取り組める最も予測可能で論理的な行動の一つです。
なかでも、自閉症の人たちはパターンや繰り返しを認識する天賦の才能を持っていることが多いため、平均的な学生よりも優れた結果を出すことができます。
自閉症の人たちのもう一つの特徴は、褒められたり、肯定されたりすることによく反応することです。
自分が完成させたプロジェクトが、仲間や先生、親の期待に応えたものであることを知りたがるので、きちんと祝うことがとても重要です。
うまくいったことを認めてあげることは、子どもたちの能力や自信を高めるための素晴らしいツールとなります。
社会に出てからもその能力は十分に発揮されることでしょう。
2020年4月以降、英国ではデジタル分野の求人数は33パーセント増加と驚異的な伸びを示しています。
需要が増えれば増えるほど、その役割を担う熟練したスペシャリストが必要になるのは当然のことです。
自閉症の子どもたちは、コーディングの分野でライバルたちを圧倒する能力を持っています。
ユニークな特性が、コーディングの重要な要素である機能、パターン、精度を満たしているからです。
しかし、最も重要なことは、自閉症の子どもたちにとってコーディングの大きな利点は、他の実りある教育と同様に、コーディングの際に学んだスキルが、他の場面でも役に立つということです。
コーディング教育は、コミュニケーション、創造性、回復力、そして何よりもチームワークの良さなど、子どもたちの人生にとても役立つスキルに貢献します。
もしあなたのお子さんが自閉症をかかえていて、プログラミングやコーディングに興味を示していたら、ぜひ挑戦させてあげてほしいと思います。
地元の教育機関を探し、見学し、プログラムについて質問し、お子さんを体験セッションに参加させてあげてください。
それはもしかしたら、子どもの将来のためにしてあげたことの中で、一番良いことになるかもしれません。
(出典:英Education Technology)(画像:Pixabay)
うちの子はiPadを渡しても、ホームボタンを連打するだけでアプリはうまく使えませんが、
興味をもっているお子さんには、まず遊びから始めて、文章を書く、絵を描く、そんな簡単なことでよいので、自分でITを使って「創る」ことを楽しめるようになることを目指すといいと思います。
その後に、それを動くようにするために「Scratch」などでプログラミングにチャレンジ。
いきなりプログラミングは難しい(つまらない)と思うので。
私はITでの仕事でずっと生きてきましたが、思えば小学生のときに父母から
「遊ぶだけのファミコンはだめ。パソコンなら買ってやる」
とITで「創る」機会を早くから得たおかげだと思います。
父母には本当に感謝しています。またその先見の明を尊敬します。
大手企業が自閉症スペクトラム障害の人の可能性に目を向けている
(チャーリー)