テーブルゲームは、自閉症スペクトラムやADHDを持つ子どもやティーンエイジャーの教室での学習方法を変える可能性があると、あるビデオゲームデザイナーは伝えています。
豪クイーンズランド工科大学の児童発達・教育学の教授も、教育的にテーブルゲームを使うことで、神経的に多様性のある子どもたちの学習成果を向上させることができると賛同しています。
特に小学校の低学年では、教師が教育の一環としてゲームを使用することが多くあります。
ビデオゲームデザイナーのジャック・フォード・モーガンは、特定のテーブルゲームを教室で使用することで、学習プロセスに広く利益をもたらすことができると述べています。
12年前、世界金融危機の影響でオーストラリアのビデオゲーム産業が縮小したとき、フォード・モーガンは教育関係の仕事に就きました。
フォード・モーガンは小学校で教師の補助員として働いていたときに、自分のゲームデザインのスキルが、学習に問題を抱えている生徒たちの助けになることに気づきました。
「そこでは主に、学習上のニーズが異なる生徒たちと一緒に仕事をしていました。
自閉症の生徒やADHDの生徒などです。
私は、彼らがやらなければならない作業を、ちょっとしたボードゲームにしてみました。
ゲームにすることで彼らにとっては、より魅力的な方法でコンテンツに接することができるようになります。
また、数学の計算を完成させるとポイントがもらえるというように、外的な動機付けも与えることができました」
フォード・モーガン氏は、テーブルゲームをプレイすることで得られる触覚的な性質が、生徒たちの学習プロセスには特に役立つと言います。
「保護者の方々にも好評でした」
その親の一人に、13歳の自閉症のベンの母親のエリザベス・ブースがいました。
ゲームを使って学習効果を高めることは新しいアイデアではありませんが、ブースは特定の学習成果を得るために設計された教育用卓上ゲームの複雑さと対象性は、これまでのゲームとは異なると言います。
「学校教育では主に、子どもたちに特定の考え方を教えようとします。
しかし、発達障害などの神経多様性のある子どもたちに、特定の考え方ををさせようとすることには大きな問題を感じてしまいます。
そして息子が最も苦手としていることの一つは、仲間との交流でした」
ブースの息子のベンは、プレイヤーが自分の考えを説明したり、正当化したりしなければならないキャラクターを登場させるテーブルゲームから大きな恩恵を受けました。
「自分の考えを明確にするのが難しい子どもたちでも、キャラクターを与えれば、認知的な負荷を軽減することができます。
自分ではない誰かになりきるロールプレイが、子供たちの心を開くきっかけになるのです」
教育・発達心理学の教授であり、臨床心理士でもあるリンダ・ギルモアは学習ツールとしてのテーブルゲームの利点についてはあまり研究が進んでいないとしながらも、学習にどのようにアプローチするかが鍵になると述べています。
「楽しくて、変わった、魅力的なことをすることが、子どもの学習に役立つという証拠があります。
そして、子どもたちが楽しい活動を好むこともわかっています。
それは、直接的な学習ではなく、より間接的な学習なので、本当に効果的なのです。
より良い学習ツールだから役立つ、教室でよりリラックスして楽しく過ごせる。
それらの複合的な結果だと考えられます」
ギルモア博士は、毎日の宿題に苦労している子どもたちにも、特定のゲームをすることが効果的だと言います。
また、ADHD(多動性障害)の生徒など、手を動かすことを必要とする生徒にも、テーブルゲームが有効だと言います。
「ボードゲームは、サイコロを振ったり、カウンターを動かしたり、車輪を回転させたりと、手を動かすものが多いです。
そして、ボードゲームには構造的な特徴があります。
つまり、楽しくて魅力的な体験ができると同時に、ルールが決められているのです」
ブースは、テーブルゲームの可能性についての研究開発が進み、学校でより広く利用されるようになることを期待しています。
「なぜなら、これは非常に大きな変革をもたらすものだと思うからです」
フォード・モーガンは今でもゲームを作っていますが、教室でトランプを切り刻んでいた頃とは比べ物にならないほどの進歩を遂げたものです。
Half Monster Games社の共同経営者兼クリエイティブ・ディレクターとして、自らテーブルゲームを制作し、妻の勧めもあって、他の人たちにも同じようなゲームを作ってもらっています。
「妻のクリスタルは英語の教師です。
私が書いていた物語を読んで、
『ゲームにしてみたら?もっているものを活かしたら』
そう言われて今にいたります」
フォード・モーガンは、ゲームの種類や複雑さが変化したのと同様に、考え方も変化していると述べました。
「オタクやギークといった文化に対する汚名の多くは、多様性と包括性に焦点が当てられている現在は、消えつつあります。
テーブルゲームは、組織化されたスポーツのようなもので、人々が集まり、一緒にスキルを学び、楽しみながら、実際のスポーツを行う周辺で交流することができ、健全な方法で競争力を表現し、チームワークを学ぶことができます」
フォード・モーガンは現在、豪クイーンズランド工科大学で哲学の修士課程を修了し、科学に基づいた教育用テーブルゲームの制作に取り組んでいます。
「特にこの10年間は、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包括性)に焦点が当てられています。
そして私は研究を通じて調べてみると、テーブルトップ・ゲーマーの約45~55パーセントが女性であるという、実に興味深い結果も得ています」
(出典・画像:豪abc)
キャラになりきる。
確かにこれも大きなメリットをもたらすのですね。
学校でもどんどん取り入れて頂きたいと思います。
テーブルトークRPGで自閉症の人たちが楽しみ日常スキルも育む
(チャーリー)