Telstra社やNAB社などのオーストラリアの大企業はニューロダイバシティの推進の一環として、自閉症の人たちを積極的に採用しています。
ニューロダイバシティプログラムは、Services Australiaなどの政府機関やDXC、SAPなどのテクノロジー企業でも行われています。
障害者を雇用するという幅広い目標の一部となるものです。
「ニューロダイバシティ」という言葉は、自閉症、ADHD、失読症など発達障害、学習障害など、世界に対する見方や接し方が異なることを意味するさまざまな症状を表しています。
オーストラリアの企業が提供するプログラムのほとんどは、自閉症の人に焦点を当てていますが、自閉症の人が他の神経多様性の症状を持っている場合もあることを理解しています。
オーストラリアでは、59人に1人が自閉症スペクトラムです。
働くことが可能なオーストラリアの自閉症の人の32パーセントが、失業状態にあります。
これは、他の障害の人に比べて3倍、障害のない人に比べて約6倍の割合となります。
「スペシャリスタン」の最高責任者であるジュリー・ロバートソンは、自閉症の人が就職に苦労するのは、能力が低いからではなく、面接の場で型にはまった行動をとれないからからだと言います。
「自閉症の人や神経多様性のある人は、雇用される価値があるさまざまなスキルセットを持っています。
しかし、企業がそれらのスキルセットを才能として認識できないことが問題なのです。
それでも、銀行や金融機関、保険会社、ハイテク企業などの大企業は、問題を違った角度から見たり、創造的な解決策を打ち出したりできる人材を必要としていることに気付き始めてきました」
スペシャリスタンは、自閉症の人に適した採用プロセスの設計や、採用後の神経多様性のあるチームメンバーをサポートするプログラムの開発をクライアント企業と共同で行っています。
Telstra社のトランスフォーメーション&ピープル担当役員であるアレックス・バデノクは、スペシャリスタンと協力して、自閉症の人をより多く採用するためのパイロットプログラムを実施しているといいます。
Telstraでは8つの職務に対して160名の応募があり、4月には入社する予定です。
「採用するべき人はあらゆるコミュニティにいます。
ですから、神経多様性のある人たちの採用を検討しなければ、当社のビジネスに大きな価値を与えてくれる人を逃してしまいます」
Telstraは、女性とオーストラリア先住民の採用と定着に関して目標を設定しています。
障害をかかえる人とLGBTIQのインクルージョンに関する取り組みについての追跡調査も行っています。
ナショナル・オーストラリア銀行は2年前から「Neurodiversity at NAB」プログラムを開始し、エンタープライズ・セキュリティ・チームに自閉症の研修生6名を採用しています。
6人の研修生のうち4人がフルタイムで雇用されました。
オーストラリアでニューロダイバシティをいち早く取り入れた企業の一つに、テクノロジー企業のDXC社があります。
2014年から「ダンデライオン」プログラムを実施しています。
「ダンデライオン」プログラムの責任者であるマイケル・フィールドハウスによれば、1万人の社員のうち120人がこのプログラムの対象者であり、70の職場体験の場も提供しています。
また、このプログラムを卒業して他の仕事に就いた人も数十人いるといいます。
フィールドハウスは、このプログラムは自閉症の人だけでなく、一緒に働く「神経質な人」のトレーニングにも重点を置いているという。
「自閉症の人にとっては、会議の進め方や電子メールへの適切な対応などをサポートします。
神経質な人にとっては、より良い会話、より良い計画、より良い業績管理のための話し合いなどが行えるようにトレーニングします」
アンソニー・カイルは、大学を卒業してから2年間仕事を探し続け、2年前にソフトウェア会社SAPの財務チームに就職しました。
カイルはSAP社の神経多様性プログラムにより、組織内のメンターとのマッチングなどのサポートを受けています。
カイルは、ニューロダイバシティプログラムの対象を技術職だけでなく、クリエイティブ職にも拡大してほしいと語っています。
「自閉症の人は非常にクリエイティブな思考を持っています。
私たちは、普通の人が見つけようと思わないようなものを見つけることができます」
ルイーズ・マッケンジーは豪ビクトリア州の公共サービスにおける自閉症成功ネットワークの責任者を務め、環境・土地・水・計画省に勤務しています。
マッケンジーは大学で何年も過ごした後、7年間の失業を経て、4年前にスペシャリスタンのプログラムを通じて初めて、この公共サービスの仕事に就きました。
ここでは、オフィスで集中力を高めるためにノイズキャンセリングヘッドフォンを購入するなど、彼女の障害を考慮した合理的な調整を行っています。
「全力で仕事をする。
私が所属するチームではそれが可能です。
サポートをしてもらうことで、本当に素晴らしく仕事ができます」
(出典・画像:豪Sydney Morning Herald)
捉え方、考え方が違うことが強みになるのです。
競争力がある企業は世界中ですでにそう取り組んでいます。
(チャーリー)