2000年代初頭以降、自閉症スペクトラムの人々が情報通信技術(ICT)をどのように利用しているかを示すさまざまな研究が行われています。
自閉症スペクトラムの人たちは対面よりもインターネットを利用したコミュニケーションを好む可能性を示すものもあります。
しかし、これまでの研究からわかった知見をまとめる、系統的な研究は行われていませんでした。
米ドレクセル大学のA.J.ドレクセル自閉症研究所の研究チームは、自閉症の若者や大人がインターネットを使ってどのようにコミュニケーションをとっているかについて、これまでに発表されていた研究を収集・検討しネット上の自閉症コミュニティのメリットなどを理解するための枠組みを提供しました。
自閉症研究所の助教授である筆頭著者のエリザベス・マギー・ハスリック博士らの研究チームは、自閉症の人たちがインターネットを使ってどのようにコミュニケーションをとっているかを調査した、これまでの32の研究について調べ、最も重要な知見を集め、パターンを探しました。
この32件の研究のうち、19件は自由形式のアンケートを用い、12件は自由形式のインタビューを用いて参加者間のパターンやつながりを調べ、もう1件はアンケートとインタビューの両方を使った研究でした。
合計で3026人の10〜17歳の自閉症の人たちのが対象となっています。
それらに対する調査研究の結果、
- 自閉症の人がインターネットを利用してコミュニケーションをとる方法の違い
- インターネットでのコミュニケーションで経験するメリットとデメリット
- 自閉症の人のオンライン自閉症コミュニティへの参加
それら3つが研究の焦点となっていました。
自閉症の人にとってのソーシャルメディアの利点として、オンラインでの会話や他者との関わり方をよりコントロールできること、そして交流中の穏やかな感覚が得られることが挙げられていました。
ソーシャルメディアは、自閉症の人が自閉症スペクトラムの仲間を見つけ、自閉症コミュニティの一員としてより強いアイデンティティを形成する機会を提供していました。
しかし、自閉症の人の中にはソーシャルメディア上で友人関係を築いていても、孤独感を持ち続け、実際の人間関係を望む人がいることも示唆されました。
マギー・ハスリック博士はこう言います。
「自閉症の人がオンラインの自閉症コミュニティに参加することで得られるポジティブな社会的利益をさらに調査することで、それを活かした療育方法なども開発することができるでしょう。
一方で、ネット上での自閉症の人のリスクを軽減するためには、例えば、自閉症の人がどのようにセクシュアリティやICTを利用しているのかなど、さらなる研究が求められます」
マギー・ハスリック博士は、今回の研究はオンライン自閉症コミュニティの重要性を支持するもので、自閉症の人がインターネットを使ってコミュニケーションをとるときにどのようにサポートするか、そしてそのトレーニングの機会の提案にも役立つはずだと言います。
「証拠を見つけることができつつあります。
より厳密で質の高い研究が、今後必要であることがわかりました。
そして、自閉症の人の多くが研究の対象になっていないこともわかりした。
自閉症の女性、自閉症のトランスジェンダー、自閉症の人種・民族的マイノリティ、社会経済的に弱いグループの自閉症の人たちについての研究がほとんどなかったのです」
発達障害、自閉症の研究、とくに心理学的なものはその結果と正反対の研究もあったりすることがめずらしくないように思います。
仮説が原理や法則と認められるまでは、こうしてこれまでの複数の研究を振り返り、大勢を教えてくれる研究も重要でしょう。
(チャーリー)