話すことができない自閉症の子は少なくありません。
欲求や不満を明確に表現することができないために、問題行動につながる可能性があります。
米ミズーリ大学の健康心理学、放射線学と自閉症と神経発達障害のトンプソン センターのブラッドリー ・ ファーガソン助教授は、ストレスが問題行動につながる前に汗のレベルによって検出できるかどうかについて研究しています。
13歳から20歳までの8人の男性にリストバンドをつけてもらい、一日中教室で汗の量をモニターする調査を行いました。
その結果、汗の量の増加はストレスの急増と一致することが多く、問題行動が起こる前に発見できる可能性が高いことがわかりました。
ファーガソン助教授は、アリシア・ブリュワー・カランのような家族の生活の質を向上させたいと考えていました。
彼女の20歳の息子、サムは重度の自閉症スペクトラム障害と診断されています。
サムは話すことができません。そして攻撃的になることがあります。
そして、精神的にも肉体的にも健康の問題をかかえています。
「息子は怒っているかどうかを私に伝えることは全くできません。
私が彼が怒っていることを知る唯一の方法は、息子が何らかの問題行動をとってからです」
サムは常に自分の気持ちを伝えることができないので、母親のカランは何が問題行動の引き金となるかを理解していないかもしれないといいます。
「息子が何かにストレスを感じているかどうかがわかれば、私たち家族はとても助かります。
息子が問題行動を起こすのを防ぐことができます」
重度の自閉症への研究を10年行っているファーガソン助教授の今回の研究は”Frontiers in Psychiatry”に掲載されています。
2019年にファーガソン助教授は8人の少年たちにマイクや天井にカメラが設置され、熟練したスタッフがいる教室で過ごしてもらいました。
他の子どもたちが学校に行くのと同じように、月曜日から金曜日までここに来て授業を受けてもらいました。
「とても自然に近い教室環境です」
そうファーガソン助教授は説明します。
少年たちはリストバンドを身につけ、教室での毎日のタスクに直面したときの汗のレベルをモニターされました。
皮膚に当てられた2つのセンサーが汗を感知します。
「汗はほとんどが水で構成されており、水は電気を伝導するので、基本的には、個人がより多くの汗をかき始めると、2つの電極の接続性が高まることになります」
研究チームはこのようにして、問題行動の発生と汗のレベルの増加との相関関係を示すデータを収集しました。
少年たちの汗のレベルは、問題行動の直前に上昇する傾向があり、それが予防できるタイミングだと考えられました。
「少年たちは、自分にストレスがたまっていることを伝えることができません。
しかし、汗をかくことで伝えてくれるのです。
私たちは知ることができるのです」
問題行動を防ぐための予防としては、休憩をとったり、ゲームやテディベアなど子どもが好きなものを利用できるようにすることが考えられます。
重度の場合には、投薬でストレス反応を和らげることもあるでしょう。
「この研究の目的は、これらの問題行動が発生する前に防ぐことであり、
最終的には生活の質を向上させることになります」
ファーガソン助教授の研究チームでは現在、デバイスと通信するアプリを開発しているといいます。
また、子どもの社会的交流を「聞き取る」アプリも作成し、生理的データやストレス反応の指標である心拍変動を収集しています。
「目標は、自閉症の人たちが時計を身につけるだけで、あとはアプリが面倒を見てくれることです」
このデバイスが実現すれば、学校の先生もは子どもが休憩を必要とするかもしれないと、親と同じようにわかる能力をもつことになるといいます。
「息子のサムはストレスを感じていても、伝えることができません。
なので、彼のコミュニケーションを補完することができるツールを持てれば、サムにとって素晴らしいことです。
息子に欠けているものを補うことができる。
ストレスを感じていることや問題行動があるかもしれないことを人に認識させることができる、素晴らしいものになると思います」
最終的には、メールやアプリを通じて、保護者や先生にレポートすることができるようになるとファーガソン助教授述べています。
そうしたレポートが集まれば、保護者は子どものストレスレベルや問題行動を起こす可能性の高い条件も理解することができます。
また、ストレスの増加を保護者、先生、介護者に警告できることで、問題行動が発生する前に予防できるようになります。
「私たちがこのような研究開発をしているのは、自閉症の子どもたちだけでなく、その家族も助けたいと願っているからです。
問題行動は子どもだけに影響を与えるものではありません。
親や介護者、施設で働く人たちや、近くにいる他の患者などにも影響を与えてしまいます」
ファーガソン助教授は、自閉症の人だけでなく、必要とする人のすべてがこの技術を簡単に利用できるようにしたいと考えています。
それは、かかえる不安への警告であったり、必要な休憩を取るために誰かに伝えるものです。
息子のサムは今は調子が良いのか悪いのかを伝えることができません。
そのため、母親のカランは、このデバイスは関わる人たちに息子がいつ休憩を取る必要があるかを知らせるのに役立つはずだと言います。
「そうなれば本当に助かります。サムだけでなく関わる人たちにとっても」
(出典:米Missourian)(画像:Pixabay)
うちの子も重度の自閉症で話すことができません。
親の私でもどうして怒っているのか、どうして泣いているのかわからなくて、申し訳なく、自分が情けなくもなります。
なのでこうしたテクノロジーは本当に求めていますし、実用化を期待しています。
(チャーリー)