- 自閉症スペクトラム障害と診断された人の自殺未遂率はどれくらい高いのか?
- 自閉症と診断された人の自殺未遂に影響を与える要因は何か?
- 自閉症と診断された女性の自殺未遂率が男性より高い理由は何か?
デンマークで自閉症スペクトラム障害と診断された10歳以上の人を対象とした全国調査が行われました。
この調査で、自閉症の人の自殺未遂のリスクが高いことが明らかになりました。
自閉症は、特に社会性とコミュニケーション能力に関連した発達障害です。
自閉症の人たちはニューロディバージェントと呼ばれることも多くなってきました。
オーストラリアのグリフィス大学の自殺研究・予防研究所のカイリ・コルベスらによる研究チームは、デンマークの調査で自閉症と診断された人の自殺未遂率がそうでない人にくらべて3倍以上高くなっていることを発見しました。
さらに自閉症と診断された人で自殺未遂を行った人や亡くなった人の90パーセントが不安障害や情動障害などもかかえていました。
「これまでの大規模な研究では自閉症と自殺傾向の関連性を示す証拠はほとんどありませんでした。
私たちの研究は全国規模の研究で、自閉症と診断された人の自殺未遂率と自殺率の上昇を、性、年齢、期間を調整した後に示した初めての研究になります」
そうコルベスは言います。
この研究では1995年から2016年までの間に自閉症スペクトラム障害と診断された10歳以上の人を分析しました。
656万人のうち、3万5000人が自閉症スペクトラム障害と診断されていました。
そのうちの73.4パーセントが男性でした。
自殺未遂や死亡に関連する危険因子はグループで異なっていました。
例えば、一般の人たちにおける自殺率と関係する、男性であることやパートナーがいないことなどの要因のほとんどは、自閉症の人たちではあてはまりませんでした。
特別な配慮を必要とすること、がリスクに関係しているようでした。
「社会性や問題解決能力がかなり限られていることを自己認識していると、それに対処したり、成功への期待を変えたりするために、自己に課せられたプレッシャーが増大する可能性があります。
これらが、自閉症の人でとくに他の精神疾患も併発している場合には、自殺の危険性を評価する上で非常に重要になります」
自閉症と診断された女性は一般集団の男性よりも自殺未遂率が高くなっていました。
その理由についてはさらに調査が必要です。
「社会的な関係や親密な関係を構築し維持することができないこと、それが自閉症の成人女性に深刻な影響を与える可能性がある一方で、自閉症の特徴をカモフラージュすることが得意であるために自閉症と診断され、支援を受けることができるようになるのは人生の後半になってしまう可能性があります。
このことが、男性の4.6倍の自殺行動の発生率の理由となるかもしれません。
男性に比べて自閉症の助成の自殺行動のリスクが高いことを指摘しているスウェーデンの研究によっても裏付けられています」
研究チームは自閉症と診断された人が直面している問題に、対処する自殺予防プログラムが効果的な予防になる可能性があることを強調します。
コルベスはこう言います。
「自閉症でない人とは、自閉症の人の自殺の原因は異なります。
より確実に自閉症の診断が行えるようになること、自閉症の子どもたちの社会的スキルを向上させるために早期療育、サポートの拡大、そしてそれぞれの自閉症の人にあわせた自殺予防活動が必要です」
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