- 自閉症スペクトラム障害(ASD)と腸内細菌微生物の関係はどのようなものか?
- 自閉症スペクトラム障害の症状に微生物移植療法がどのような効果をもたらすのか?
- 微生物移植療法を通じて、自閉症スペクトラム障害の人の腸内環境や代謝物にどのような変化が見られるのか?
米国では54人に一人の子どもが発達障害の自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断され、その数は増加しています。
自閉症は通常、社会性、コミュニケーション、人間関係、自制心などに影響を与えます。
“the journal mSphere”で発表された、ローザ・クラマリング=ブラウンとジェームズ ・ アダムスらによるチームの研究では、自閉症スペクトラム障害の診断と治療において、腸内細菌微生物の重要な可能性を強調しています。
自閉症は、さまざまな程度で人に影響を与えることから、「スペクトラム障害」といわれます。
遺伝的との関係が示唆されているものの、その原因は明らかになっていません。
社会的な影響を与えるほど、自閉症の人は多いにもかかわらず、現在、米食品医薬局が承認した治療法はありません。
これまでの研究で、研究チームは微生物移植療法(便移植)として知られている革新的なアプローチの使用が、自閉症スペクトラム障害の症状へ、持続的な効果をもたらすことを確認しています。
それは健康な人の腸内細菌を自閉症スペクトラム障害の人に移植する方法です。
7〜8週間かけて、腸内細菌を移植し自閉症スペクトラム障害の人の腸内細菌に著しい変化をもたらし、消化器系の問題と自閉症スペクトラム障害による行動の問題の両方を改善しました。
そして、驚くべきことにその症状の改善は、研究終了後、2年経っても継続していました。
今回の新しい研究では、微生物移植療法によって変化した血漿および糞便代謝物を詳しく調べています。
米ミズーリ州立大学のクラマリング=ブラウン教授はこう言います。
「代謝物を調べることは、微生物が消化管の症状や行動にどのように影響を与えるかを理解するのに役立つため重要です。
また、代謝物はバイオマーカーとしても利用できます」
実際、今回の研究では、微生物移植療法処置前に619種類の血漿代謝物を分析した結果、自閉症スペクトラム障害の子どもたちには特徴的な代謝プロファイルが示されています。
腸内の微生物種を単純に集計するのではなく、血液や糞便中の代謝物を注意深く調査する。
それは、「協調」と「競合」の両方を形成しうる複雑な細菌間の相互作用を解明しようとする場合に非常に重要となります。
そして、微生物移植療法処置後には微生物の多様性の顕著な増加など、正常な健康な腸内環境に近い状態になるように細菌群が調整されたことが示されました。
今回の研究では、血漿サンプルでは有意な代謝変化が、糞便サンプルではより小さな変化であったことが明らかになりました。
見られたことが明らかになりました。
アダムス教授はこう言います。
「自閉症の子どもとそうでない子どもとの間で、代謝物レベルに多くの違いがあることを確認しました。
そして、微生物移植後に代謝物レベルの多くが改善したことを観察できたことはすばらしいです」
さらなる研究により、腸内マイクロバイオームと自閉症スペクトラム障害に関連する神経学的特徴との間の、複雑で重要な相互作用の理解が進むはずです。
微生物移植療法や他の微生物ベースの治療法を微調整することで、ASDの症状緩和に効果を発揮することができるようになるはずです。
自閉症でない人の「便」を自閉症の人の腸の中に入れると、腸内フローラが変化し、自閉症による症状や自閉症の人がかかえることが多い腸の問題についても改善するという研究の続報になります。
効果があるのなら、痛みなどもないために期待したいところです。
(チャーリー)