- 感覚と運動の問題の原因は何か?
- 自閉症の人たちにとって感覚や運動の問題がどれほど重要か?
- 今回の研究が自閉症の人たちやその家族にどのような影響をもたらす可能性があるか?
自閉症の人たちによく見られる、感覚と運動の問題の原因についての今回の新しい研究は、自閉症の人たちをより助けることにつながると期待されています。
” BRAIN”に掲載された、英エクセター大学とバース大学のチームによるこの研究では、自閉症に関係する知覚や運動の問題は、自閉症の人たちのまわりの世界を知覚する方法の違いを含む、複雑な神経プロセスによって引き起こされている可能性が高いことがわかりました。
自閉症は発達障害の一つです。
社会的なコミュニケーションの永続的な困難、興味の偏り、反復的な行動などが見られます。
それだけでなく、感覚や運動の問題も自閉症の人によく見られる特徴になっています。
自閉症に関連する一般的な感覚や運動機能の問題には、感覚過敏や手と目の協調性の低さ、多くの場面で見られる不器用さがあります。
よく知られている、特に社会的なコミュニケーションや相互作用、制限された反復的な行動パターンなどの困難だけでなく、感覚や運動機能の問題も自閉症の人にとっては深刻で、生涯にわたって続くものとなっています。
しかし、これらの問題の原因や発生するメカニズム、および個人の生活の質への具体的な影響については、ほとんど知られていません。
今回の研究では、研究チームは最先端のモバイルアイトラッキングとモーションキャプチャー技術を用いて、これらの問題の原因と、それらを改善する方法を理解しようとしました。
自閉症の有無にかかわらず、150人以上を対象に運動や感覚の問題に関わる、多くの神経プロセスやメカニズムを探るテストを行いました。
その結果、これまでは自閉症の人の運動障害の原因になっていると考えられていた多くのことが、実際にはそうでないように思われることがわかりました。
この研究は、英エクセター大学と英バース大学の両方の博士課程の学生であるトム・アーサーが中心となり行われました。トムはこう説明しています。
「この研究では、物を拾ったり持ち上げたりする際に、個人がどのように手と目の動きをコントロールしているかを調べました。
その結果、自閉症の人もそうでない人と同じように予測して、これまでに持ったことのない新しい物を持ち上げていることを示しました。
これは、これまでの多くの研究理論に反しているものです。
この分野におけるこれまでの結論が少し広すぎたり、単純化されすぎたりしていた可能性があることを示しています。
多くの日常生活のスキルや行動は、予測し事前の期待に基づいて行動する能力に依存するため、このことはとても重要なのです」
この研究に参加した英エクセター大学のスポーツ健康科学部のギャビン・バッキンガム博士は、次のように付け加えています。
「感覚と運動に基づく問題は、ほとんどの自閉症の人たちの生活に影響を与える自閉症の中核的な特性であることがますます明らかになってきています。
しかし、これらの問題についての科学的な理解は不足しています。
日常生活の困難さに対処するためのエビデンスに基づいた支援が行われていないのが現状です」
英バース大学応用自閉症研究センター長のマーク・ブロスナン教授はこう述べています。
「予測不可能な世界を予測しようとするときに自閉症の人が経験している困難をより理解する。
今回の研究はそれに貢献するものです。
すでに研究チームはこの研究の成果を、仮想現実の中で活用しようとしています」
この研究は、自閉症に関連する感覚と運動の難しさに対処すること目的とした将来の療育の基礎となることが期待されています。
(出典・画像:英バース大学)
科学の良さはこうして、これまでの常識も覆して真理を探求されることにあります。
ますます理解が深まり、困難を減らすことに役立つ研究は、心から感謝し応援しています。
(チャーリー)