自閉症者とそうでない人との間の会話では笑顔が少なく、多くの表情のミスマッチが起きることが新しい研究で示唆されました。
会話をしていると人は無意識のうちにお互いの行動を模倣する傾向があります。
それは社会的な絆を作成し、強化するのに役立つと考えられています。
しかし、この同期は自閉症の人とそうでない人との間ではうまく行われないことが研究で示されました。
そして自閉症の人にはずっとそれが続くために、人と出会い、関係を維持することを難しくしている可能性があります。
これまでの研究では、コンピュータの画面上に現れる社会的なシーンの画像に反応する自閉症の人の表情を調べていました。
これに対し、今回の研究はふだんの会話の中でどのように表情が変化するかを捉えています。
顔の表情の変化は観察するのは簡単です。しかし測定するのは難しいと、米フィラデルフィア小児病院の精神医学助教授である主任研究者のジョン・ヘリントンは言います。
ヘリントンの研究チームは、機械学習技術を用いて自動化された精度の高い方法で、表情の変化を定量化する新しい方法を考案しました。
ヘリントンによれば、自閉症の人が見せる表情は、社会的協調性の問題の現れであるといいます。
そのため、顔の表情の変化を追跡することは自閉症の人に対する療育の効果を測る方法になる可能性もあります。
「これは、自閉症の特徴についての変化を測定するのに最適なツールになります」
今回の新しい研究には20人の自閉症の人と16人のそうでない人が参加しています。
年齢は9歳から16歳で、知能テストのスコアは同等です。
各参加者は2回、10分間の会話を行いました。
最初は自分の母親と、次は研究チームのスタッフと、いずれも2週間の旅行の計画を立てるための会話です。
積極的で協力的な交流を促進するために、研究者たちは参加者にお金や移動方法に焦点を当てないように伝えました。
2台の高精細カメラで会話を記録しました。それぞれのカメラが会話をする相手を撮影しています。
その後、自動化された表情表現アルゴリズムを用いて記録を分析しました。
このアルゴリズムは、微笑んでいるときに使われる2つの表情筋の動きを追跡するものです。
研究チームは、自閉症の人の会話ではそうでない人の会話と比べて平均的に、笑顔が少ないことを発見しました。
研究チームはまた、各参加者が会話の相手とどの程度表情を同期させているかをも測定しました。
一般的な人の顔の表情は、会話をしている間に同期しだんだん同じようになっていく傾向がありました。
しかし、自閉症の人にはその傾向は見られませんでした。
自閉症の人たちはそうでない人よりも会話中に表情は同期していない傾向がありました。
そして、その程度は参加者の母親がチェックリスト報告していた社会的コミュニケーション能力、適応行動、共感能力の困難さと関係が認められました。
そして、自閉症の人が会話中に表情が一致しないことは、母親との会話よりも研究スタッフとの会話をしたときに顕著になる傾向があり、会話の相手との親密さが表情パターンに影響を与えることも示唆されました。
この研究は”Autism Research”で発表されました。
しかしこの研究結果は、知能指数と言語流暢性のスコアが比較的高い自閉症の人たちの小さなサンプルに依存しており、これが一般的な結果とはいえないと米ノースイースタン大学の情報学の准教授であるマシュー・グッドウィンは指摘します。
また、自動化された顔分析では、これらの顔の動きが人間の観察者にとって実際に何を意味するのかを判断することができないと米エマーソンカレッジのコミュニケーション科学の准教授ルース・グロスマンは言います。
「この機械学習アプローチは、表情の質は考慮されておらず、特定の顔の動きのあるなしだけわかるものです」
これまでの研究で、顔の上と下の部分で、相反する感情のシグナルを伝えることがあることが示唆されています。
そのため、
「口の動きだけを見ていると、顔の上半分が伝えている情報を見逃してしまいます」
とグロスマンは指摘します。
グロスマンによれば、今後の研究では自動化された顔分析と人間の観察データを組み合わせることで、顔の表情の解釈も加えることができるといいます。
また、心拍数、瞳孔の拡張、汗の分泌などの生理学的な測定を取り入れて、会話中の参加者の覚醒度を測定することも指摘します。
今回の研究を行った米フィラデルフィア小児病院のヘリントンの研究チームは、他の会話のテーマや違う関係の人を相手にした場合の表情パターンを調査したいと考えてます。
「私たち今回、特定の相手、特定の瞬間、特定の文脈での特定の瞬間に注目しました。
しかし、たとえば怒っているときはどうなるのでしょうか?
怖がっているときはどうなるのでしょうか?
一人ではなく集団を相手にしたときにはどうなるのでしょうか?」
そして今後は、知能指数が低い自閉症の人たちも流暢な言葉を話すことができる自閉症の人たちも参加できる調査方法にし、より大規模な研究を行うことを計画しています。
気分がいいときは、うちの子はずっとにこやかな表情で会話できます。
(といってもお話できないので、私が一方的に話してるだけですが。)
気分が悪いときは暗い顔だったり、怒りの表情を見せています。
お話ができない人とできる人とでも大きく違ってくるはずです。
ただし、うちの子も含めて
「会話の相手との親密さが表情パターンに影響を与える」
は多くの人で共通するだろうと思います。
少々コミュニケーションの方法に違いがあっても、違いなのだと認識し、その人を見てほしいと願います。
(チャーリー)