英ケンブリッジ大学自閉症研究センターの研究チームによる新しい研究によれば、トランスジェンダーや性別が異なる成人は、シスジェンダーの成人(生まれたときに割り当てられた性別に対応する性同一性を持つ人)の3倍から6倍、自閉症と診断される可能性が高いことがわかりました。
60万人以上の成人のデータを用いて行われたこの研究は、”Nature Communications”で発表されています。
発達障害である自閉症の人における性別の多様性をよりよく理解することで、自閉症でトランスジェンダーや性別多様性のある個人に対して、より良い医療へのアクセスや診断後のサポートを提供することができるようになります。
研究チームは50万人以上の個人のデータセットを含む5つの異なるデータセットを使用しました。
これらのデータセットでは、自分の性別についての情報や自閉症やうつ病や統合失調症などの他の精神疾患の診断を受けているか、自閉症の特徴を測定する項目も含んでいました。
驚くべきことに、5つのデータセットから、トランスジェンダーや性別が異なる成人はシスジェンダーに比べて、自閉症と診断されたことを示す可能性が3倍から6倍高いことがわかりました。
この研究では、自閉症の診断を受けたことを示した成人のデータを使用しています。
しかし、実際には自閉症スペクトラムをかかえていても、そう診断されていない多くの人がいる可能性があります。
英国では、人口の約1.1パーセントが自閉症スペクトラムであると推定されています。
今回の研究結果によれば、トランスジェンダーや性別多様性のある成人の3.5から6.5パーセントの人が自閉症スペクトラムである可能性が考えられます。
カナダのトロント大学の、この研究の共同研究者であるミン‐チュアン・レイ博士は、次のように述べています。
「私たちは、シスジェンダーの男性と女性で自閉症の症状がどのように異なるかについては、より多くのことを学び始めています。
トランスジェンダーやジェンダー多様性のある人に自閉症がどのように現れるかを理解することで、ジェンダーや性別に関連した自閉症についてもより、理解できるようになります。
医師は自閉症をよりよく認識し、個別化された支援や健康管理を提供することが可能になります」
トランスジェンダーやジェンダー多様性のある人たちはまた、精神的な健康状態、特にうつ病の診断を受けたことがあることを示す可能性が高くありました。
シスジェンダーの人たちの2倍以上の確率で経験していました。
トランスジェンダーや性別の多様性を持つ人は、自閉症の診断を受けているかどうかにかかわらず、シスジェンダーに比べて自閉症の特徴の尺度でも平均的に高いスコアを示していました。
この研究を主導したバルン・ワリヤー博士はこう言います。
「大規模なデータセットを用いたこの発見は、自閉症であることと、トランスジェンダーやジェンダー・ダイバーシティであることを共にかかえるのが多いことを確認できるものです。
私たちは今、この共起の重要性を理解し、このグループの人たちの幸福に寄与するよう、サポートできるようになる必要があります」
なおこの研究は、性同一性と自閉症の共起について伝えるものであり、一方が他方を引き起こす原因になっているかどうかまではわかりません。
ケンブリッジ自閉症研究センター所長のサイモン・バロン・コーエン教授はこう言います。
「自閉症の人も、トランスジェンダーやジェンダー多様性の人も、どちらも疎外されることなどを経験しています。
誰もが社会的な偏見や差別がなく、誰もが自分自身らしく生きれる。必要であればサポートを受けられる。
違いを祝い、平等を享受できるよう、個人の権利をみんなが守ることが重要です」
以前にもこうした自閉症と性の多様性との関係についての研究をお伝えしたことがあります。
そのときには「確かに私もそう」という反応がある一方で、ヒステリックに「さらに自閉症の可能性も高いなんて、差別するな」というような抗議もありました。
私には差別する気持ちなんてまったくありません。
求める方には生きやすくなることにつながっていくと考える、研究の内容をお伝えしたのみです。
自閉症の子をもつ私としては、それこそそうやって「自閉症を差別するな」という気持ちになりました。
(チャーリー)