- 自閉症の子どもたちは、脳のつながりに一つのパターンがあるのか?
- 視覚刺激への反応に問題のあるグループとそうでないグループでは、社会的な能力に違いがあるのか?
- 脳の視覚に関わるネットワークと左前島とのつながりが弱い子どもたちは、どのような社会的行動の特性を示すのか?
新しい研究によれば、自閉症の子どもたちでは、視覚に関わる脳の領域と感覚情報を処理する領域とのつながりが弱いことがわかりました。
このつながりの弱さが、自閉症の子ども社会的な行動の困難と関連していると考えられます。
研究チームは視覚皮質と、感覚情報を処理するもっとも重要な部分である顕著性ネットワークとのつながりに焦点を当てました。
社会的行動で重要な役割を果たす、知覚と情報の処理を司る前部島が含まれているネットワークです。
研究チームは発達障害の自閉症の子どもたちと、比較対象としたそうでない子どもたちとの間に、いくつかの違いを発見しました。
それだけでなく、自閉症の子どもたちの間でも違いを発見しています。
これは、自閉症の子どもたちの間でも、脳のつながりについて一つのパターンがあるわけではないことを示します。自閉症の人の脳のネットワークが、ますます複雑な状況であることがわかりました。
自閉症の人の脳のつながりは隣接する領域で過剰になっている一方で、離れた領域ではつながりが弱いとするこれまでのいくつかの研究とも矛盾するものでした。
研究チームは、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で50人の自閉症の子を含む7歳から18歳まで93人の脳をスキャンしました。
そして、自閉症の子どもはそうでない子どもに比べて、脳の視覚に関わるネットワークと左前島との間のつながりが弱いことと、また脳の視覚に関わるネットワーク内の接続が少し強いことがわかりました。
この研究では、アンケートを通じて、子どもたちの感覚処理のパターン、社会的な能力、および計画することや整理することを含むスキルについて評価も行っています。
子どもたちの親に例えば、明るい光を苦手にしていないかなど、子どもたちが視覚的な刺激にどう反応するかなどを尋ねました。
そして、それをスコアにし自閉症の子どもたちをグループに分けました。
視覚刺激への反応に問題のないグループでは、脳のつながり程度と社会的な行動の間に関係は見られませんでした。
しかし、視覚刺激への反応に問題のあるグループでは、脳内の視覚ネットワークと左前島とのつながりが低い子どもたちのほうが平均して社会的な能力が優れていました。
研究結果は、感覚に対する脳の処理が自閉症の人の社会的行動に何らかの形で影響している可能性も示しています。
この研究は”the Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry”に掲載されました。
(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay)
・自閉症の子どもたちは、視覚に関わる脳の領域と感覚情報を処理する領域とのつながりが弱い
・このつながりの弱さが、自閉症の子ども社会的な行動の困難と関連していると考えられる
脳の活動を見ることができるようになって、こうした今回の研究結果が伝えられるようになりました。
こうした研究があるからこそ、診断や療育がより良いものになっていきます。
自閉症は、脳の特定部位に起因するのではなくネットワークによるものだとする研究を最近は多く見かけます。
学習障害、発達障害は脳の特定領域ではなくネットワークに原因
(チャーリー)