- 発達障害を持つ子どもたちが直面する困難とは何か?
- 障害を持つ子どもたちを支援するために、どのような施設やプログラムが存在するのか?
- 発達障害や異才を持つ子どもたちにとって、どのような環境が望ましいのか?
アレックスのような子どもたちは「二重に特別の子ども」と呼ばれます。
「僕はほとんどのすべての学習科目の成績が良いです。
しかし、僕は自閉症スペクトラム障害をかかえています。」
そう発達障害の16歳のアレックスは言います。
アレックスにとって「二重に特別の子ども」であることはチャンスと困難を意味します。
アレックスは2年飛び級をして、昨年15歳のときに大学で数学コースを受講し始めました。
「いつも困難をかかえていました。いつも負けていました。」
学年が終わるたびに、次の年にどうしたらいいのかわからなかったといいます。
「学年を終えるときには、いつも不幸に感じていました。」
しかし、アレックスの両親が米アイオワ大学教育学部の「ベリンブランクセンター」を知ってそれが変わりました。
ベリンブランクセンターの使命は、数学、科学、芸術に優れた特定の若者を育成することです。
「二重に特別な子ども」に手を差し伸べ、受け入れます。
アレックスはここはチャレンジさせてくれる快適な場所だと感じました。
「二重に特別な子供(”twice exceptional”)」や「2e」という用語は、才能を持っている一方で何らかの障害をかかえる子どもたちに使われます。
多くは、発達障害の自閉症をかかえています。
13歳のクラークは、マインクラフトやフォートナイトをプレイすること、そしてプログラミングが大好きです。
一方で自閉症をかかえるために、人と話すことは苦手、そしてそれは心にも影響すると言います。
「私の頭の中にある考えは、まとまりのない本棚にある本のようなものです。
それどころか、床に散らばっている本かもしれません。」
しかしクラークは、文章を書いたりプログラミングをしているときには素晴らしく集中し取り組みます。
それは、クラークが行った「ロボット劇場」でよく現れました。
クラークは一週間かけて、脚本を書きました。
そして、それをプログラミングしロボットに演技をさせたのです。
「ゲーマーになりたかったけれど、手を持っていなかったためにあきらめるロボットの話です。」
そしてクラークにとって自閉症は人生で直面した困難の一つでしかありません。
困難は他にもありました。
クラークは「がん」も乗り越えてきました。
しかしクラークは自閉症やがんについて語ることはありません。
それよりもロボット演劇でのプログラミングの難しさを説明してくれます。
クラークはここで学び始めたことでまた予想外の喜びがありました。
「同じ部屋に住むルームメイトが僕の友だちに少しなってくれました。」
ここ、ベリンブランクセンターがクラークやアレックスのような子どものために活動する理由の一つは、小児精神科医で発達の研究も行うハンナ・スティーブン博士のような専門家がいるからです。
スティーブン博士は脳の発達と自閉症などの障害との関連も研究しながら、夏の間はここに来る子どもたちを指導しています。スティーブン博士の研究室を訪れると13歳の生徒が、顕微鏡を使って自閉症に関わる脳細胞について観察を手伝っていました。
スティーブン博士は優しく接していますが、福祉や教育のためにでなく、純粋に研究を進めるために手伝ってもらっています。
「ヒストグラムの最適化について修正してみましょう。きっとそれであなたは何かつかめるはずです。」
自閉症スペクトラム障害をかかえているこの生徒は6週間の間、このように本物のサイエンスに取り組んでいます。
「生徒たちが私が発表した研究で利用した重要なデータの一部を収集してくれました。
生徒たちは研究論文の共著者になっています。」
精神科医としてスティーブン博士は、自閉症スペクトラム障害をかかえる子どもたちが直面する課題をよく認識しています。
「自閉症スペクトラム障害のような障害が、すばらしく多くの長所をもっている人にどのような影響を与えているのか考えています。
すばらしい強みを持っています。しかし障害があるために活かすことができていないことがあるのです。」
ベリンブランクセンターでの取り組みは、障害がそうした邪魔にならないように考えられたものです。
先生やスタッフは、いじめや個人的なスペース、衛生などすべてに対応するための方法についての詳細なアドバイスについて学んでいます。
生徒にアドバイスしたり、相談を受けることができるカウンセラーも常にいます。
そして、生徒も自分で公表しない限り、ここの生徒だということは外部の人にはわかりません。
ベリンブランクセンターは「国際的にも才能がある子どもが集う」場所であるとともに発達障害の子どもたちにとってはパラダイスのような場所になっています。
そうなった理由の一つに、ディレクターのスーザン・アスリーンの貢献もあるでしょう。
スーザンは心理学の教授であり、才能と自閉症についての研究と発表を続けています。
ベリンブランクセンターでは、スーザンをはじめ自閉症の人たちが、自分たちの理解が進むように一生懸命に取り組んでいるといいます。
マルティカ・テイスはクリエイティブプランニングとコンピュータ・サイエンスを大学で学んだ後にここで、研究アシスタントとして働いています。
マルティカは高校生のときに自閉症と診断をされ、二次障害である不安症やうつ病とも戦ってきました。
マルティカはここでの取り組みに関わりたくてやってきました。
自閉症の研究をしたいという願いがここに導いたのです。
ここで仕事を始める、先生やスタッフのすべてが学ぶ自閉症の子どもたちに対応するための方法やアドバイスを自分も初めて学んだときのことをこう言います。
「泣きそうになりました。
それは、自閉症の人たちをよく洞察したものになっていました。
望んでいたものの私が意識できていなかったことまで、
すべてが現され、そして提供することが約束されていたんです。」
マルティカは自分が高校生の頃にこのベリンブランクセンターとそれらのアドバイスを知っていたら、どんなに良かっただろうと思います。
「私のような子どもたちがこれから、私がかかえた困難をかかえないようにしたい。
それを望んでいるんです。」
(出典:米npr)(画像:米アイオワ大学ベリンブランクセンター)
こうした天才、異才が縮こまることなく、どんどん伸びていく。
そんな環境はこれからますます重要になるはずです。
日本では、日本財団と東大先端研による「異才発掘プロジェクト ROCKET」でしょうか。
世界中でこういう環境がどんどんできてほしいと思います。
新しくできるというよりも、今ある学校がそのように変わっていってほしいと思います。
天才、異才と誰かに言われなくたって、誰もが自分らしくのびのび、伸びていく。
本人だけでなく、社会にとっても、それは幸せなことのはずです。
発達障害の人の特徴となっている能力で人間は氷河期を生き延びた
(チャーリー)