- 自閉症スペクトラム障害(ASD)の人たちにはどんな特徴があるのか?
- 自閉症の人たちの雇用状況はどうなっているのか?
- オーティコンの取り組みはどのような成功を収めているのか?
世界保健機関によると、世界中の160人に1人の子どもは自閉症スペクトラム障害(ASD)です。
一部の研究ではASDの人の割合はもっと高く、世界的に増加しています。
ASDの原因については多くの理論があり、
ASDは社会的スキル、コミュニケーション、言語にかかえる困難を特徴としています。
また、強いこだわりや反復行動などもあります。
ASDの人の約半数は失業しています。
そのなかには、大学院を卒業した人の3分の1も含まれています。
ASDの人の知的機能のレベルはとても多様です。
ASDなどの発達障害がない人に比べて優れていることも少なくありません。
ASDの息子をもつダーク ミュラー・リーマスはASDの人々のユニークな能力、そして雇用されることの困難、その両方についてよく知っています。
ミュラー・リーマスは2007年に、ドイツのミュンヘンに拠点をおくアナンダ・ソーシャルベンチャー基金から50万ユーロ(約5900万円)の出資を受けた後、2011年にドイツのベルリンでオーティコン社を設立しました。
オーティコンの目的は、自閉症スペクトラム障害の人を情報通信技術(ICT)コンサルタントとして採用し、自閉症の人たちに雇用機会を提供することです。
自閉症の人がもつ論理的、正確、途切れない集中力、パターン認識、エラーを発見する直感的能力、は、品質管理、セキュリティ、ビジネスインテリジェンス、コンプライアンスの分野では特に価値があります。
求められるものです。
オーティコンの英国法人のCEOであるレイ・コイルはこう言います。
「私たちの使命の一部は、
『卓越性を提供することにより自閉症に対する認識を変える』
ことです。
私たちのクライアントがオーティコンのコンサルタントと仕事をして、自閉症の人と働くことのメリットを知って、将来的にそうした才能のある人たちをもっと雇用するようになることを願っています。
オーティコンのコンサルタントはリモートで行うこともあればクライアントのオフィスで作業を行うこともあります。
オーティコンのコンサルタントにはジョブコーチがついていて、最高のパフォーマンスを発揮できるような環境づくりをクライアントに教えるだけでなく、クライアントにもトレーニングを行っています。」
オーティコンのITコンサルタントは自閉症の人のみです。
そのためオーティコンの採用に応募する際には、履歴書などのほかに自閉症の診断書も必要です。
その後、非公式のおしゃべり、スキルの評価、予備ワークショップの3つのステップに進みます。
この期間は最長で2ヶ月ほどになります。
自閉症スペクトラム障害のジェームス・ニーリーは、オーティコンで現在はデータアナリストです。
オーティコンに入社する前の仕事では、あまりに多くの騒音と気が散るものに囲まれたオープンオフィス環境でとても苦労をしていました。
ニーリーはこう言います。
「今ではマネージャーやジョブコーチから、仕事環境でもサポートがあります。
困難な状況になると、それらを取り除いてくれます。
ジョブコーチは、定期的に休むようにすすめてくれます。
不安や感覚負荷の蓄積を避けるのに役にたっています。
またタスクの優先順位付けも支援してくれます。」
オーティコンのコンサルタントのマーティン・ニューマンはここで働く前は自分で会社を経営するプログラマーでした。
しかし、ビジネスパートナーが病気になったときに、プログラム以外のさまざまなことに対応し自分一人で会社を経営するプレッシャーには対応できないことに気づきました。
そこでオーティコンに入社しました。
「オーティコンだと、自分のやりたいように仕事ができます。
仕事の質に完全に集中できます。優れた仕事をするのに邪魔になる、心配ごとがなくなります。
ここで働けて一番いいところは、自分の得意を発揮できることです。」
オーティコンは主に4つのサービスを提供しています。
1.品質保証とテスト
2.分析
3.ソフトウェア開発・マイグレーション
4.コンプライアンスと報告
これらのサービスの提供には、必要とされる技術スキルの他に、細部への注意、体系的に作業を行う、パターン認識、エラー検出、および持続的な注意力が必要です。
シーメンスやKPMGなどの有名企業もオーティコンのクライアントです。
KPMGのイノベーションの責任者であるニック・フロストはオーティコンで働く自閉症スペクトラム障害の人たちの高い価値を認識しています。
「オーティコンのコンサルタントが、自分の強みに集中できるようにすることで、素晴らしい結果を生み出してくれました。今では私たちチームの重要なメンバーです。」
現在ではオーティコンは、イギリス、ドイツ、フランス、スイス、イタリア、アメリカ、カナダに15のオフィスをもっています。世界中で270人以上を雇用し、そのうち約190人がコンサルタントとして働く自閉症スペクトラム障害の人です。
2018年までには270以上のプロジェクトに携わりました。
オーティコンの英国法人のCEOであるレイ・コイルはこう言います。
「今後5年間の私たちの目標は、
プロフェッショナルな自閉症の人たちの雇用機会に良い影響を与え続けることです。
ニューロダイバーシティを企業に広める触媒となります。」
(出典:スペインEU-Startups)(画像:auticon)
障害者雇用の枠をうめるための採用ではなく、発達障害の方がもっている能力、得意を発揮してもらうために採用する。
日本でもそうした企業が増えていってほしいと切に願います。
それは、発達障害の方にとってだけ良いことではありません。
多様な見方、考え方、能力で多様な価値が生まれる。
企業、社会、そして人類にとってそれは良いことになるはずです。
マイクロソフトが自閉症の人を雇用する理由
(チャーリー)