- 自閉症を早期に発見するためのチェックツールはどの程度信頼できるのか?
- 自閉症と診断された子どもとされていない子どもとの間にどのような違いがあるのか?
- 自閉症のチェック方法を改善するにはどのようなアプローチが有効なのか?
新しい研究によれば、アメリカでもっとも広く利用されている発達障害である自閉症のチェックツールは、後に自閉症と診断された幼児の大部分を見逃していました。
このツールは、乳幼児期自閉症チェックリスト修正版(M-CHAT)というものです。
正しくチェックできたのは、自閉症の子どものうちの40パーセント未満でした。
そして、このツールで自閉症とチェックされた子どもの85パーセントは自閉症ではないことが判明しました。
この研究結果は、これまでにノルウェーやマレーシアで行われた同様の研究と一致するものです。
自閉症の正しいチェックツールの必要性を指摘しています。
そして、自閉症を発見するためにすべての幼児に対して診断を行う必要があるかについても考えさせるものにもなります。
自閉症の診断を受けなければ、早期の発見、療育ができなくなります。
しかし、自閉症でないのに自閉症と診断をしてしまえば、親を不必要に心配させることになります。
この研究を発表した米フィラデルフィア小児病院の臨床心理学者のホイットニー・ガスリーはこう言います。
「この結果から、自閉症の診断は不必要と考えてほしくありません。
私たちが指摘していることは、もっと他のチェック、診断方法が必要ではないかということです。
これまで、自閉症であることを見逃してしまった子どもたちを見逃さない方法です。」
ガスリーらによる研究チームは、2011年の1月から4年半に渡って31の病院や診療所で行われた1歳4ヶ月から、2歳2ヶ月までの26000人近くの子どものM-CHATの記録を調べました。
M-CHATは子どもの発達について「はい」か「いいえ」で答える23の質問によるものです。
たとえば、「あなたの子供は電話で話す真似をしたり、人形でお世話をする真似やその他に真似をすることがありますか?」などです。
研究チームは子どものM-CHATスコア、そしてその子どもの4〜8歳の医療記録を調べました。
M-CHATの記録が確認できた20375人の子どものうち、454人が8歳までに自閉症と診断されていました。
M-CHATはこれらの子どもの61%を見逃していました。
そしてM-CHATで自閉症が疑われ、その後に自閉症と診断をされた子どもは15パーセントだけでした。
しかし、M-CHATで自閉症と疑われた子どもは、見逃された自閉症の子どもに比べて平均して7.5ヶ月も早く自閉症と診断をされていました。
早期に療育を行えることが、早期診断を行う大きな理由だとガスリーは言います。
「見逃された子どもは、早期療育の機会を数ヶ月も失ってしまったのです。」
M-CHATの信頼性は使用方法によって異なります。
米国小児科学会は特定のツールを推奨してはいませんが、子どもたちを生後18か月と24か月の2回に渡ってチェックすることを推奨しています。
今回の研究の対象になった子どもたちでは、2回チェックを受けていたのは約半数でした。
この2回診断を受けた子どもたちについては、M-CHATの信頼性は改善していました。
後に自閉症と診断された子どもの50%について自閉症と疑うことができていました。
M-CHATの誤り率が高い理由として考えられることがあります。
それは、さらに質問などを行う必要がありとされた幼児の60パーセントが、それに応じていなかったのです。
そのために自閉症の疑いがあるとすることができなかった可能性があります。
「2段階方式だと、実施することが現実的には難しいことが反映されています。」
この研究に加わっていなかったカナダののアルバータ大学の小児科教授であるロニー・ズワイゲンバウムも、小児科医はM-CHATが実際には自閉症である子どもの多くを多くを見逃してしまうことがあることに注意を払い、介護者の懸念を真剣に受け止める必要があると言っています。
また、M-CHATのように親が観察した結果を答えるのではない、親に依存しないチェックツールが自閉症のチェックの精度を高めるのに役立つと考えられます。
ガスリーは両親と幼児の相互作用を分析するAIなどによる手法の開発も支援しています。
これは自閉症の明確な特徴を抽出できるようにし、従来のテストを補助するものになります。
(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay)
こうして今あるものについての問題点を指摘する研究も、より良いものへつながることになります。
支援を必要とする方へ適切な支援が行われるように、現状も疑い直視する医療・科学は本当に頼もしく思います。
「自発的」運動が自閉症の子の症状を改善する可能性。東大の研究
(チャーリー)