- ジャネットは一人で生活する自立の道を歩んでいく中で、どんな困難に直面しているのか?
- ジャネットが過去と現在で人間関係において直面してきた問題は何だったのか?
- ジャネットが今後、自立した生活を送るために必要なサポートや支援は何だろうか?
ジャネット・シメオーネは自立して生活が送れるとは思っていませんでした。
それでも、71歳になってアパートで一人暮らしを始めてから4年が経ちました。
ジャネットは知的障害です。うつ病や不安症もかかえています。
友だちを作ることや一人で生活することは簡単ではありませんでした。
ジャネットはこれまで、おばと10年近く一緒に住んでいました。
一人で暮らすように応援したのもおばでした。
おばはジャネットが自分の人生を生きてほしい、そして友だちができることを期待したからです。
ある日、おばはジャネットに見つけたアパートについて話しました。
ジャネットは激しく拒否しました。
しかしジャネットは、おばが自分の将来、心配についてゆっくり話してくれたことを思い出します。
「私が病気になったら、あなたはどうなるの?
誰があなたの世話をするの?
自分で生きていけるようにならなければいけない。」
ジャネットはずっと「できない、できない」と答えていたそうです。
おばは病気になりました。
膵臓がんでした。
そして亡くなりました。
ジャネットが今住むアパートの家賃は障害給付金によって支払われています。
ジャネットは部屋を飾り付け、料理のしかたを学んでいます。
ジャネットは自立できている今を誇りに思っています。
うつの症状をそらすために、たびたびテレビに目を向けます。
「私は家にいるときにはリラックスしてテレビを見て、うつであることを忘れるんです。」
おばが亡くなってから、ジャネットの人生でもっとも大事な人がアシュリー・ステアマンです。
2018年6月から付き合いがはじまった行動療法士です。
当時ジャネットは、雷雨、加齢、歯の痛み、そして療育などが原因で不安はますます大きなものになっていました。
アシュリーは1回2時間程度で月に3回訪れます。
ジャネットがかかえる不安に対してどう対処するべきかを検討し、会話を通じて、不安を軽減していきます。
アシュリーは行動療法士として、健康を改善するために感情に対処する能力を伸ばすことを目的にしているといいます。
ジャネットとアシュリーは一緒に座って、ジャネットの次の週のスケジュールを確認します。
ジャネットは車の運転ができないため、アシュリーが病院や買い物に連れて行っているからです。
ジャネットは歳を重ねるにつれて孤独を感じてきました。
イタリアの大家族の出身ですが、イタリア語を話すことはできません。
仲の良かった祖母も幼い頃に亡くし、両親は早くに離婚してしまいました。
ジャネットは継父とは緊張した関係がずっと続きました。
まわりの同年代の人からはずっとバカにされてきました。
「私はずっと友達が欲しいと思っていました。
しかし、誰も私と友達になりたいと思っていませんでした。」
ジャネットは子どもの頃、憂鬱や不安という言葉を知りませんでした。
誰かが近づいてきたり、電話がかかってきたり、バスを待っている間、ずっと胃が痛くなりました。
ジャネットはこれは当たり前のことだと思っていました。
友達はずっとできず、そしていじめられていたそうです。
ジャネットの行動の問題に気づいたのはおばでした。
そして、ジャネットは不安症とうつ病と診断をされました。
ジャネットはたった一人生きている兄のところにもときどき行きます。
兄は、買い物や処方せんをもって薬を購入することを手伝ってくれます。
ジャネットは今でも苦しんでいます。
「アパートに移ってから、ますます孤独でした。」
ジャネットの担当医が1年前に身体中に傷があることに気づきました。
ジャネットが自分で掻きむしるようになってしまったのです。
また、行動療法士のアシュリーはジャネットが約束を忘れるようになったことが気になっていました。
ジャネットは加齢のせいにしていますが、そうではありませんでした。
神経科医が診ると、ジャネットの不安症が悪くなっていることが原因だと考えられました。
アシュリーがそばにいないときには、発達や行動に問題をかかえる人たちの支援団体のところに行っています。
そこでは、ジャネットは人生で初めてまわりの人たちと良い関係が築けているといいます。
ここを紹介してくれたのも亡くなったおばでした。
ここに来ている人の多くは、知的、精神的、身体的などいずれかの障害をかかえています。
ジャネットはここで創作したり、園芸やウォーキングを行っています。
本当の友達がやっとできたとジャネットは感じています。
「ここには私のような人がいるんです。」
(出典・画像:米PUBILICSOURCE)
まだまだご苦労は多いと察しますが、多くのサポートを受けこうして一人で暮らされています。
そうなるように願われていた一方で、そうせざるを得ない事情が発生したためです。
そんな人はこれから、世界中でますます増えていくはずです。
そのためさらに簡単なことではなくなっていきますが、たしかで続けられる支援が求められます。
発達障害、知的障害の人が人とのつながりを築けるナイトクラブ
(チャーリー)