- 母親の声に対する反応が弱い自閉症の子どもたちが、なぜ異なる脳の活動を示すのか?
- 自閉症の子どもたちの社会的コミュニケーションにおける困難にどのような影響を与えるのか?
- 自閉症の子どもたちの脳の特性を変えることができる療法は存在するのか?
多くの子どもたちは、母親の声に対してなじみのない人の声に比べると強い反応を示します。
しかし、米スタンフォード大学医学部による新しい研究では、発達障害である自閉症の子どもは母親の声に対する反応が弱いことがわかりました。
fMRIによる脳のスキャンによって、表情の読み取り、学習、記憶の領域での活動が少ないことがわかりました。
さらに、報酬に関わる、異なる刺激に反応する脳のネットワークの活動も少ないことがわかりました。
この研究結果は”eLife”に掲載されています。
この研究は、スタンフォード大学の精神科および行動科学の助教授であるダン・エイブラムス博士が中心になり行いました。
「このことが、まわりの人とのコミュニケーションとの困難にどう影響を与えているかは、これから研究をする必要があります。」
エイブラムス博士は自閉症の子は、母親の声に反応するように脳のネットワークが構築されていないことを示唆しているといいます。
また、自閉症の子の社会的なコミュニケーションの障害の程度と、母親の声に対する脳の反応の違いの程度に相関があることもわかりました。
研究を行った精神医学及び行動科学の教授であるビノッド・メノン博士、レイチェルおよびウォルター・ニコラス博士らは、特定の脳のネットワークを対象にした認知療法の開発につながるものだといいます。
母親の声は、多くの子どものコミュニケーションにとって重要なものとなります。
例えば小さな赤ちゃんはお母さんの声を聞いて癒やされるだけでなく、10代の子どもでもテキストで言葉を送られるよりも、お母さんの声で言葉を送られたほうが安心できると、これまでの研究で示されています。
そして、母親の声への反応は自閉症ではない子どもたちでははっきりと脳の活性が認められています。
発達障害である自閉症は、社会的およびコミュニケーションにおいて困難をもたらします。
こだわりや反復的な行動も特徴です。
母親の声は社会的、言語的コミュニケーションと学習についての第一歩になるものです。
今回の新しい研究には、7歳から12歳までの42人の子どもが参加しました。
半分の子どもたちは自閉症です。もう半分はそうではありません。
子どもたちは3つの異なる録音された音を聴きながら、脳をfMRIでスキャンしました。
母親の声、なじみのない女性の声、そして声がない環境音の3つです。
研究チームは、2つのグループの子どもたちの間で脳活性のパターンと脳ネットワークの接続を比較しました。
また、聞いた声が母親のものか、そうでないかを子どもたちに直接たずねました。
自閉症でない子どもたちは、97.5パーセントの正解率で母親の声を当てました。
自閉症の子どもたちの正解率は87.8パーセントでした。
これは誤差を超えた有意な違いです。
なじみのない女性の声に比べて、母親の声を聴いた場合の脳の活動は、自閉症である子に比べて自閉症でない子どもたちは多くの脳の領域が活性化していました。
母親の声を聴くと、海馬、学習や記憶の領域、表情に関わる脳の領域が特に活発になりました。
脳のネットワークの接続パターンも、自閉症の子どもとそうでない子で違いがありました。
「そして、母親の音声を聴いているときの脳の活動、脳のネットワークの接続パターンと、社会的なコミュニケーション活動との間に大きな関係が認められました。」
そうエイブラムス博士は言います。
そして母親の声に対する脳の反応が社会的なコミュニケーション能力を築くための重要な要素であることを示唆していると付け加えました。
現在の多くの自閉症に対する療法は、子どもたちが社会的な行動をができるように動機づけを行います。
こうした療法によって、今回明らかになった自閉症の子の脳の特性を変えることができるのかについて今後研究したいと研究チームは言います。
(出典:米スタンフォード大学)(画像:Pixabay)
お母さんの声は本当に強い影響があると思います。
子どもの頃だけでなく、どんなに歳をとってもそう思いますので。
しかしその影響が少ないとなると、たしかにうちの子もあてはまるような気がしますが、社会性、コミュニケーションに問題を与えるのはもっともに思います。
よりよい成長の手助けとなる方法の発見や開発に、問題の原因をこうして明らかにしていくことは欠かせません。
知的障害の人のかかえる絶望感をまわりはわかっていないのかも
(チャーリー)