- 脳の基本的な機能を理解することで、発達障害の診断方法が進歩するのか?
- なぜ脊椎動物は生き物と生き物でないものを区別できるのか?
- 自閉症スペクトラム障害の神経科学的研究は、将来的に他の疾患にも応用できる可能性があるのか?
イタリアのトレント大学の神経科学教授、ジョルジオ・ヴァロッティガラの専門分野は動物の認知です。
ジョルジオ教授は、ミツバチ、ゼブラフィッシュ、そして生まれたてのひよこの頭脳を専門としています。
「私は医師でも、発達障害の専門家でもありません。」
そうジョルジオ教授は言います。
「しかし、脳がどのように機能しているのかに関わる私の基礎研究が、これまでよりもずっと早く発達障害の診断に利用できるテスト方法の開発につながりました。」
発達障害の診断のためのテストは、子ども、そして家族にとって重要となるものです。
早期診断によって早期療育が可能になり、その後の支援の必要性が軽減されることがこれまでの研究によって示されています。
ジョルジオ教授が、生まれたてのひよこが顔のようなものを好む性質があることを発見したときに、人間の場合についてはどうか興味を持ちました。
結論からいうと、ほとんどの人が本能的に顔のようなものを好むことがわかりました。
そして、ランダムにあるいは機械のように動くものよりも、生き物のような動きをするものにも惹きつけられます。
「脊椎動物は生まれたときから、生きものと生きものでないものを区別することができます。
私たちはその機能をアニマシーと呼んでいます。
動物は顔のようなもの、生き物のような動きに反応します。
それは、動物が生きていくために必要なメカニズムなのです。」
2つの目と鼻にみえるような3つの点あれば、本能的に顔のようだと認識します。
こうして顔だと認識する傾向があるために、例えば雲が顔に見えたりするのです。
それは、私たち生きものは、生き物を見つける必要があるためです。
自閉症スペクトラム障害の人たちにおいては、この顔を好み、見つける傾向が高くありませんでした。
顔に興味をもたず、生きものの動きにも興味をもたず、視線をあわせていない顔の写真を好んでいました。
数年に渡る研究で、ジョルジオ教授の研究チームは、発達障害である自閉症スペクトラム障害の診断に使える簡単な試験方法を開発しました。
早期に自閉症スペクトラム障害であることを見つけ、その後の生活を良くするための早期療育を行えるようにすることが目的です。
生まれたばかりの赤ちゃんが、かたち、顔、生きものの動きに関心を示すかを測るテストを開発しました。
自閉症スペクトラム障害の子、そうでない子のこれまでの結果データから、診断ができるものです。
その後、顔や生きものの動きの認識に加えて、こちらを見ている顔、こちらを見ていない顔の画像によるものも追加されました。
自閉症スペクトラム障害の赤ちゃんは、こちらを見ていない顔の方を好んでいたためです。
次のステップでは、研究室の外で使えるシステムにすることです。
「今後このテストを自動化することができれば、神経科学の専門家でなくても、診断に使えるようになります。
私たちが行っていた動物を対象にした脳の基礎研究と、自閉症スペクトラムの診断については大きな距離があるように思えますが、それがむしろよかったのかもしれません。」
(出典・画像:EUHORIZON)(画像:Pixabay)
広く脊椎動物が本能的にもっている、つまり脳の基本的な機能が欠けていると考えるなら、自閉症スペクトラム障害にとどまらず、もっと命にかかわる広範囲で深刻な状況をもたらすように思えるので、私には疑問が拭えないところがあります。
しかし、うちの子を見ると生物と無生物を区別して見たり接しているような感じはたしかにありません。
動物園などで触れる動物がいても、気にするようなところはなく、触るように勧めても机や椅子を相手にしているような感じです。(ただ、馬だけは違いました。自分より圧倒的に大きいからでしょうか。)
早期療育や療育に役立つ科学的な研究が進められることはありがたく思います。
発達障害の人の多くは全体を見ない。目の錯覚が診断に役立つかも
(チャーリー)