- 自閉症スペクトラム障害の人の自殺リスクはどのように違うのか?
- 自閉症スペクトラム障害の女性の自殺率はどう変化しているのか?
- 自閉症スペクトラム障害の人の自殺に影響を与える要因は何か?
米国疾病管理予防センターによれば、米国では子どもの59人に一人は、発達障害である自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断をされています。
何十年も研究が行われてきましたが、発達障害、自閉症スペクトラム障害について未だわからないことはたくさんあります。
米ユタ州立大学の研究チームが、自閉症スペクトラム障害の人たちの自殺についての調査を行いました。
20年にわたる記録からの調査では、自閉症スペクトラム障害の女性について自殺のリスクが高まっていることがわかりました。
この調査結果は”Autism Research”に掲載されています。
この研究調査を行ったユタ州立大学の作業療法を研究する助教授のアンネ・キルビー博士はこう言います。
「自閉症スペクトラム障害の人の自殺リスクについて、医師や家族の心配が深刻になっています。」
研究調査の対象とした期間、1998年から2017年の間に米ユタ州では、女性7人、男性42人の自閉症スペクトラム障害の人が自殺により亡くなっていました。
その20年を5年毎に4つの期間に分けて、自殺で亡くなった人の分析を行いました。
1998年〜2002年:男性2人・女性0人
2003年〜2007年:男性5人、女性0人
2008年〜2012年:男性14人、女性0人
2013年〜2017年:男性21人、女性7人
はじめからの3期の間では自閉症スペクトラム障害の人とそうでない人での、自殺により亡くなっている人の割合に違いはありませんでした。
しかし、終わりの4期については自閉症スペクトラム障害の人の自殺でなくなる人の割合は高いものとなっていました。
自閉症スペクトラム障害の人の自殺率0.17パーセント、そうでない人は0.11パーセント
この割合の増加は、自閉症スペクトラム障害の女性の自殺が増えたことによります。
自閉症スペクトラム障害の女性の自殺率0.17パーセント、そうでない女性は0.05パーセント
そして、自閉症スペクトラム障害の人の自殺は銃によるものは多くありませんでした。
これらの調査結果から研究チームは、
「自閉症スペクトラム障害の人たちの自殺率はわずかに高いものであるものの、自殺はまれなことであり、自閉症スペクトラム障害と診断されても必ずしも心配する必要はない。」
と述べています。
「今回の研究調査から、自閉症スペクトラム障害の人が必ずしも、自殺のリスクが高いわけではないことが示されました。
しかし近年については自殺率の増加がみられたため、その原因を理解し、そうしたことを防ぐことができるようにさらなる研究は必要です。」
スウェーデンで行われた2016年の研究によれば、自閉症スペクトラム障害の人の早期死亡の主な原因は自殺となっていました。
今回の研究では、研究チームは米国ユタ州の発達障害について記録簿と医療検査局による自殺についてのデータを用いています。
そのデータは、自閉症スペクトラム障害の診断基準が変わってきたことが反映されていない、自殺の原因の判断が医療審査官によって違ってくること、そして自閉症スペクトラム障害の有無に限らず、自殺への影響が高いと思われる不安症やうつ病の有無についてもそのデータにはなく、問題点があることも研究チームも伝えています。
(出典:米Science Daily)(画像:Pixabay)
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「必ずしも高くない」
という結果には、少し安心します。
しかし、そうなる原因をつきとめ、防ぐために、そうした施策が行われるために、さらなる研究がされることを願います。
自閉症の人の多くが40歳未満で死亡。みんなに行動してほしい
(チャーリー)