- 言語療法は発達障害の子どもの言語発達にどのように影響するか？
- 言語発達に問題を抱える幼児に対して、どのような方法が言語発達を助けるのか？
- 発達障害の子どもに対して、言語能力を向上させるために親が取るべき行動は何か？
言語の発達を１５年以上追跡調査した研究によれば、発達障害などにより遅れが生じている子どもはそうでない子どもに比べて、大きくなっても言語習得能力を持ち続けています。
そしてこの研究では言語発達は幼児期にもっとも現れる。
つまり２，３歳のころよりも、１歳になる前のほうが、言語発達を助けることの効果が高いと考えられることがわかりました。
この研究を行った米国立小児保健発達研究所の発達心理学者、ダイアナ・パトニックは、この結果は、言語障害をできるだけ早くみつけて治療することの重要性を強く支持するものだといいます。
そして、言語は人生のさまざまなことに影響を与えるため、とても重要であるといいます。
「言葉を効果的に使用する能力は、より良い社会的な生活、感情のコントロール、学校での成績、そして就職に関連してきます。」
発達障害の子どもの言語能力は、そうでない子どもと変わらない速さで向上することもこの研究で確認されました。それは、昨年の研究の結果と一致しています。
昨年の研究では、発達障害の子どもとそうでない子ども、理解したことを伝える言葉については発達に差異がなかったことがわかっています。
オーストリアのマードック子ども研究所の言語病理学者のアマンダ・ブリンゲルはこう言います。
「発達障害の子どもはそうでない子どもに比べて、語彙が少ないことが多くありますが、言語能力はずっと発達を続けます。大きくなるにつれて着実に言語能力も成長していくのです。」
言語の発達は子どもそれぞれ大きく異なります。
例えば、他の人とのコミュニケーションに言語を使うことがなくても、繰り返し同じ言葉を言う、発達障害の子が多くいます。
パトニックの研究チームは、５０００人以上の発達障害などでない子ども、１０００人以上の自閉症、失読症、聴覚障害、早産で生まれた子どもの言語発達について、追跡しました。
参加した自閉症の子どもの知能指数や言語能力はさまざまです。話せない子どももいました。
子どもの語彙、文法、識字についての能力を生後６ヶ月から１５歳までの間に１１回、評価しました。
幼児期の言語発達、６ヶ月から１歳までの間は、不規則に変動していました。
２歳を過ぎると、言語能力は発達をみせていきました。
米スタンフォード大学の発達行動小児科医であるハイジ・フェルドマン教授は、この研究によって言語の発達は、身長と同じように成長していくことが確かめられたといいます。
言語発達に影響を与える可能性がある要因、子どもの言語に関わらない知性や社交性、あるいは母親の年齢や教育状況などを考慮しても、それは変わりませんでした。
この研究は”Science Advances”に掲載されています。
今回の研究調査を行ったパトリックはこう言います。
「親も医師も、子どもの言語の問題に対して対処を待つべきではありません。
発達障害と診断されるのには時間がかかります。
一方で、言語発達の問題に対しては早く対処したほうがよいからです。待たずに対処してください。」
遺伝的要因だけでなく環境的な要因が、発達障害でも発達障害でなくても、子どもたちの言語スキルを向上させるためです。
「親たちは、子どもの言語能力に合わせてしまう傾向があります。
話をしない子どもたちには、話しかけないのです。
話しかけてください。」
言語療法が、発達障害の子どもの言語発達にどう影響を与えるかは、今回の研究ではわかりません。
今回の研究調査では、子どもたちが言語療法を受けたかどうかを追跡していないためです。
パトリックは今後の研究で、言語発達に問題をかかえる兆候を示す幼児に向けての、言語発達を助ける方法の開発と評価を行いたいとしています。
（出典：米SPECTRUM）（画像：Pixabay）
これまでに思われてきたことと異なり、大きくなっても言語能力の発達は期待できるという研究です。
脳はこれまでに思われてきた以上に柔軟です。
あきらめさえしなければ、成長していくんです。
話せない発達障害の子に効果。声と同じ高さの音を叩く言語療法
（チャーリー）
