- 発達障害の人はなぜ不安を感じやすいのですか?
- インテロセプション療法はどのようにして不安を軽減するのですか?
- 発達障害の人が共感を感じやすいとしたら、どのように対応すればよいですか?
120人の発達障害の人が参加し、自分の心拍に意識を向けることで不安を軽減する「インテロセプション療法」の効果を確認するために臨床試験が行われています。
英サセックス大学の心理学者、サラ・ガーフィンケル教授が10年研究をしてきた、心臓と脳との相互作用が、感情や行動に影響を与えるという発見を治療に利用することを目指すものです。
「発達障害の人の多くが高い不安をかかえています。」
そうガーフィンケル教授は言います。
体の中の動きを感じ取ることを「インテロセプション」と呼びます。
そして、この能力が自分の感情をコントロールし他人と調和できる能力に関係することが研究でわかってきました。
ガーフィンケル教授は、発達障害の人が社会とのやりとりに困難をかかえてしまう理由の一つに、このインテロセプション能力が他の人とは異なるためだと考えています。
これまでの研究で、発達障害の人は自分の心拍に注意することができていないことが多いこと、そしてそれが出来ない人ほど、かかえている不安や心配が深刻なものになっていることがわかりました。
今回の臨床試験では120人の発達障害の人たちが、数週間に渡って8回のトレーニングを受けます。
自分の心音に耳を傾け、決められた時間内に何回、心拍があったのかを数えるのです。
既に、発達障害でない人たちに参加してもらい行った予備試験では、このトレーニングによって不安レベルの減少が確認されています。
この臨床試験に発達障害の41歳のベッカが参加しています。
「私は心配になっていないときがありません。
いつも隠れたい気持ちがあります。
不安のために、たびたび引っ越しをしてきました。」
ベッカには感覚過敏がありパニックになってしまうことがあります。
自分のまわりの世界を「強烈で、激しくて、速くて、痛い」と感じ、ストレスや不安になっているといいます。
この臨床試験のトレーニングを通じて、レベッカは自分の心、そして呼吸を意識することができるようになってきたといいます。
「自分の心拍に集中するのは、私にとってよいことでした。
私の外側、そして内側、どんなに騒がしくなっても、意識し、落ち着くことができます。」
発達障害の人の「共感」についての学術論文を読んだことが、ガーフィルド教授がこの研究を始めたきっかけでした。
「その論文では、発達障害の人は痛がっている人を見ると、自分も同じかそれ以上痛く感じるような反応を見せるということが示されていました。
つまり発達障害の人は、他の人の痛みまで感じてしまうのです。」
これは、発達障害の人は「人と共感できない」という考えとは、まるで反対のことだと思ったと言います。
「発達障害の人についての古い研究では、人に共感しないとしていましたが、それは全く真実ではないのです。」
しかし、発達障害の人は自分の感情を示すことができず、他の人の感情を理解するのに困難をかかえることが多くあります。
「そして、発達障害の人は、感覚が過敏であるために体の内面を感じ取る感覚も変化してしまったと考えられないでしょうか。」
発達障害の人は脳処理の早い段階で人への共感を行ってしまい、心拍が変化する。
しかし、そうした体の内面の変化をきちんと捉えることができないために、心拍数が急に増減するように感じることが発達障害の人たちの不安や脅威を引き起こすと考える仮説です。
ガーフィンケル教授は、今回の発達障害の人たちによる臨床試験によって、さらなる洞察ができると考えています。
参加した発達障害の人たちは、トレーニングの前後で脳スキャンにより感情に関わる脳領域の活動の変化が測定されています。
この研究に関わるソフィー・ディックスはこう言います。
「このプロジェクトは、このように心と体のつながりを研究することで、発達障害の人がかかえる不安の理解、そして治療に役立つものになるはずです。」
(出典・画像:英The Guardian)
マインドフルネスや瞑想がいいとされることにつながりそうな研究だと思います。
きちんとした医療的観点から評価されることで、薬の服用を減らせられるようなものになるかもしれませんね。
発達障害の子どもたちへの瞑想、マインドフルネスのメリット
(チャーリー)