- 障害を持つ人が公共交通機関を利用することに困難を感じる理由は何か?
- バーチャルリアリティを使った練習が、実際の状況にどのように役立つのか?
- 知的障害や発達障害の人にとって、お金を扱ったり外で行動することの障壁はどのような点にあるのか?
18歳のベイド・ガウは落ち着いた、これから自立して生活をしていける若者に見えます。
しかし、これまで一人で電車に乗ったことがありません。
発達障害や知的障害のある人の多くにとって、公共交通を利用することは簡単ではありません。
ガウはこれから電車に乗ることができるように、実際に駅に行くことなしに練習を始めます。
ガウは、障害のある人が現実にある状況に対して、バーチャルリアリティ(VR)で練習を行えるようにするエンデバー財団のプログラムに参加してます。
このプログラムの責任者、アンドリュー・シャントはこれまでにこのVRを使って20人の練習を手伝ってきました。
アンドリューは、発達障害や知的障害の人がお金を扱ったり、公共交通機関を利用するような、ふつうの人には簡単なことであっても、それがとても困難であることはめずらしくないと言います。
「外に出るだけで大きな不安をかかえてしまう人もいれば、人混みがあると難しくなってしまう人もいます。
実際に現実世界に飛び込む前に、バーチャルリアリティ、安全で静かな世界で練習ができるんです。」
VRのゴーグル、ヘッドフォン、そしてゲームのコントローラーを持って、障害のある人たちがヒントをもらいながら、シミュレーションを体験していきます。
うまく進めなかったり、危険を感じた場合には最初の場所に帰ってきます。
エンデバー財団のこのプロジェクトでは、安全に電車に乗ること、安全に外を歩くこと、ATMや銀行の窓口での対応について、練習を行っています。
「私が支援を行っている知的障害の人の家族の多くは、息子や娘には電車に一人で乗せることなんてしない。それは無理だから。そう言います。
電車に乗るためのカードについて理解をしていなく、そのまま電車に乗ってしまって、罰金を払うことになったトラブルを経験した若者もいました。
しかし、このVRの練習を通じて、電車に乗るための一歩を、安全に始めることができます。」
16年の間、障害者の支援を行ってきたアンドリューは、最初に親がもっていた「あきらめ」もどんどん消えてきたと話します。
「お金を扱うのが困難な知的障害の女性がいました。
この女性は障害年金を父親の口座に振り込んでほしいと望み、自分がお金に関わることを避けていました。
しかし、この練習を通じて、お金に関わることに自信が持てるようになりました。
今、彼女は自分の銀行口座に振り込んでもらうことを考えています。
恐れていたものから解放されて、新しいことに取り組めるようになった人たちをみると、私たちも本当にうれしくなります。」
エンデバー財団のプロジェクトの目標は、知的障害の人が自信を持って現実世界で、対応ができるようにすることです。
「たくさんの種類の硬貨、紙幣、それぞれのATMの使い方など、VRに反映させなければならないことはたくさんあります。
知的障害の人がこれからどこかで働くのであれば、扱うお金についてよく理解できなければなりません。
きちんとできるようになれば、雇用の可能性も大きくなるはずです。」
「人の顔を見ると、大きな不安をもってしまう人には、バーチャルリアリティの中の仮想の人間と話すことで、不安を小さくすることができるかもしれません。
実際に、そうすることができれば、知的障害や発達障害の人の不安を小さくできる有望な方法になります。」
(出典・画像:豪abc)
障害のある方を助けるVR。
現実でないからこそ、安全で安心な環境を作れて、現実世界での困難を減らす練習がこうしてできます。
こうした役に立つVRが、開発した研究機関などにとどまらず、国も越え広く多くの場所でも使えたらと思います。
(チャーリー)