- 発達障害と性同一性障害は関連しているのか?
- 性同一性障害が発達障害と同時に現れることがあるのか?
- 性同一性障害と発達障害のケアにおいて考慮すべき点は何か?
性同一性障害についての専門家などたちは、自分の身体的性別についての違和感から治療を求める人の多くに発達障害のような特質があることに気づきました。
これについての研究は、性同一性障害のある発達障害の子どもについての研究が発表された1990年代にまでさかのぼります。
自分の性別に対する不快感と自閉症スペクトラム障害の同時発生や相関についての研究は現在盛んに行われています。
医学の分野では、性同一性障害と自閉症スペクトラム障害を同時に抱えることが少なくないと認識されるようになってきています。
自分の身体的性別についての違和感をかかえている青年において発達障害である割合が、そうでない青年に比べて高いことを報告したこれまでの多くの研究からです。
これは、性同一性障害と発達障害について生物学的原因の関連の高さを示唆するものです。
性同一性障害は、生まれてきたときに割り当てられた性別と、自分が認識している性別との不一致により生ずるものです。
自分は男である、女であると認識する人だけではなく、男でも女でもないと認識する人もいます。
米国のチルドレン・ナショナル・ヘルスシステム医療センターにて、子どもの性別の問題と発達障害プログラムの創設者である、神経心理学者のジョン・ストランはこう言います。
「私たちは、国際的に行われた複数の研究から、発達障害の人はそうでない人よりも、多様な性別であることを示す十分な証拠を持っています。」
ストランは2014年の研究で、親へのインタビューから発達障害の子の5%以上が性同一性障害の疑いがあったことを伝えています。
より大規模に行われたもう一つの研究では、オランダのアムステルダムの診療所で性同一性障害の治療を受けている若者の7.8%が自閉症スペクトラム障害と診断されていたことがわかりました。
これらの研究は、性同一性障害は生物学的なことが原因であるという仮説を裏付けるものかもしれません。
性同一性障害の原因については、現在論争が続いています。
発達障害については生物学的なことが原因であると考えられていることが多いため、性同一性障害との関連性は、性同一性障害にかかわる遺伝子をつきとめようとしている研究者たちを後押しするものといえるでしょう。
しかし一方で、発達障害の人は社会規範にあまり関心がないために、まわりの人が考える「男らしさ」「女らしさ」に従わないことから、性別の不一致と過度に見られている可能性もあります。
実際多くの人たちに、幼い頃から男らしく、女らしくとその性別に期待されることに応えようとする、社会的な圧力がかかってきたという事実があります。
20名以上の研究者たちが共同して研究し、発達障害と性同一性障害の両方を訴える人に対応するための診断ガイドラインも作成されています。
発達障害であることによって、性同一性障害への必要なケアが妨げられることがないようにするものです。
「たしかに発達障害がもたらす症状から、性同一性障害が起きているように思われる子どもがいます。
しかし成長するにつれて、そうではなかったということがあります。」
またこの研究では、発達障害の人について性同一性障害についても診断すること、性同一性障害の人には発達障害について診断することを勧めています。
それぞれの人にあわせて適切な思いやりのあるケアを行うこと、そしてその人だけでなく家族も含めて、同様な人たちが他にもいることを知ってもらいます。
性同一性障害の人たちには、自閉症スペクトラム障害を悪いものとだけと捉えるべきではないとストランは言います。
社会的な圧力を無視できる能力が、自由をもたらしてくれるからです。
「発達障害であることによって、社会の圧力を気にしない、大胆で個性的な人になれるかもしれません。
例えば、これまでに革命を起こしてきたリーダーには、性の不一致、発達障害であった人が少なくありません。
そうした人たちは、まわりからの期待、社会の圧力なんて気にしないで、ありのままの自分でいたから素晴らしかったのです。」
発達障害者の支援団体で働くトランスジェンダーのリード・キャプランは、自分の性別について押し付けられたり、決めなければならないことは、発達障害の人たちにとってすごくストレスがかかることだと言います。
また、とても幼いうちから不必要に性別を気にさせる療育方法があることも指摘します。
キャプランは発達障害の子、トランスジェンダー、シスジェンダーの子に性別を押し付けるような考えについて拒否します。
「私は療育中に、人形での遊び方を絵を使って教えられたことがあります。
それに私は興味をもてませんでした。
いろいろな服を着れるように、たくさんの服が描かれた絵もありました。
女の子にはスカートとドレス、男の子にはスーツでした。
子どもの性別がどうであろうが、発達障害の子への療育では、性別を強調するべきでないと思います。」
キャプランは、発達障害の人たちは性別の不一致をなくそうとしないで、ありのままにもっとオープンであっていいといいます。
これは、性同一性障害や発達障害の人に治療を行っている医師たちの考えとも一致するものです。
発達障害の人も、他の誰とも同じように自分で性別を決めていいのです。
誰だって、自分が生きやすいように生きていくのが一番です。
後に英雄と呼ばれるような、大きなことを成し遂げた人にそういう人が多いのは、みんなも確かに知っていますよね。
(チャーリー)