- ネット上での嫌な経験をした子どもたちにオートクラフトはどんなサポートを提供しているのか?
- オートクラフトが世界中で注目を浴びるようになったきっかけは何か?
- ダンカンはなぜオートクラフトに取り組み始め、Web開発からプログラマーの仕事を辞めたのか?
カナダのオンタリオ州サウスポーキュパンに住む父親は、自分自身が発達障害だとは思っていませんでした。
「5年前に診断されました。
息子のキャメロンが成長していくと、私が子どものころと重なるところが多くありました。
私は病院に行き、たくさんの診断を受けて1年ほどかかりましたが、私も36歳で、息子たちと同じく発達障害と診断されました。」
そう父親のダンカンは言います。
ダンカンはアスペルガー症候群と診断されています。
息子の12歳のキャメロン、10歳のタイラーはマインクラフトで嫌な経験をしていました。
発達障害の子どもたちがネット上で嫌な目にあっていることを、ダンカンは父親として知りました。
そして、「オートクラフト」を作ったのです。
オートクラフトは発達障害の子と家族のみが楽しめるマインクラフトサーバ、マインクラフトの世界です。
「始めたときには、こんなに大きなものになるとは思いませんでした。
初めての発達障害の子に向けたものだったので、口コミで人気が広がりました。」
オートクラフトが有名なユーチューバーに紹介されると、それまでWebの開発をしていたダンカンに一週間に500ものメールが来るようになりました。
そして、オートクラフトとダンカンは世界中のニュースで紹介され、TEDでも講演を行いました。
それから、人生が変わりました。
「お父さんはいつも忙しくて、話すこともできませんでした。」
そう息子のタイラーは言います。
ダンカンは、オートクラフトを利用できるユーザの管理をしています。
オートクラフトサーバで遊ぶためには、承認される必要があります。
そして、オートクラフトの世界は、発達障害の子どもにとって療育のような機会になります。
「Web開発をしているときには、1日に何時間も働きました。プログラマーなのです。
夜遅くまで仕事をしていました。
しかし、オートクラフトに比べたら、何も得るものはなかったように思います。」
「学校でいじめられて、本当につらい状況にある子どもたちがたくさんいます。
私は役に立ちたいのです。
私は、つらいときにそんな子どもたちと話をしたいと思っていました。」
「息子のタイラーは、マインクラフトがずっと大好きでした。
しかし、泣いていることもありました。マインクラフト上でひどいことを言われることもあるからです。」
ダンカンは息子にうつ病になってほしくないと願いました。
そして、同時に世界中の発達障害の子どもたちにも似たような状況が起きていると考えると胸が苦しくなりました。
「マインクラフトで同じように嫌な経験をする子どもたちがたくさんいます。
私の息子も嫌な経験をしてるのです。」
ダンカンの息子たち、タイラーもキャメロンも今はオートクラフトで遊んでいます。
「オートクラフトは発達障害など特別支援が必要な子どもたちのための聖域です。
お父さんもいじめられていました。友だちと楽しい時を過ごすことができなかったのでオートクラフトを作ったのです。お父さんは巨大な聖域を作ったのです。
有名な人が来たりすることで、ますます大きな世界になっています。」
そう息子のキャメロンは言います。
そして、オートクラフトはただ楽しいだけではないと言います。
「発達障害の子どもを助けてくれるものです。
僕たちもお父さんと一緒になって、自分のするべきことをしています。
お父さんがみんなを助けています。
僕は会話を助けています。」
オートクラフトは初めてから成長をつづけ、発達障害の若者向けの第2サーバーも現在はあります。
「このサーバは、15歳から28歳までの人が参加しています。
これまでのサーバでは、自分が考えていることを話せず、自分の居場所がなかった人たちです。」
そうダンカンは言います。
第2サーバでは、高校の話やパニックを起こさないように誓い合ったりすることが許されています。
「第2サーバでは、6歳、7歳の子どもへの配慮は必要ありません。」
オートクラフトに参加することが承認されたユーザは現在9000名以上になります。
規模が大きくなってきたため、ダンカンはプログラマーとしての仕事を辞めて対応することにしました。
「今はこれをやらなければならないという考えに至ったのです。」
ダンカンは、クリエイターをサポートするWebからの収入に頼っています。
「Facebookでは、私がこうして稼ぐことにひどいことを言う人もいます。
しかし収入なしでは、子どもたちのために続けることはできません。
私にも、家賃や食費、養育費、そして運営するための費用が必要なんです。」
そうダンカンは言います。
ダンカンは、Facebookで発達障害の子の父親のグループも運営しています。
発達障害の子の子育てについて、喜びを分かち合う機会です。
また、自分自身につけられている発達障害というレッテルについても伝えています。
「私はそれを恥じません。
私は私です。私は発達障害です。私は私であることに誇りを持っています。」
息子たちもお父さんに誇りを持っていると、息子のキャメロンが言います。
「僕たちも尊敬しています。
お父さんが発達障害であることはたいした秘密ではありません。
お父さんがすごいのは、たくさんの子どもたちを守っているからです。」
(出典・画像:カナダtimmins press)
作った方も発達障害とは知りませんでした。
オートクラフトは徹底したルールが設けられ、大人が助ける発達障害の子たちに配慮されたものです。
マインクラフトは本当にずっと大人気ですね。
うちの発達障害の子のきょうだいも小さなころから大好きです。
せっかく作った建物などが「あらし」によってみるみるうちに壊されていって、号泣していたことを思い出します。
壊すほうはそんなことは考えていないでしょうが、小さな子どもが一生懸命作ったものを壊されていくのを見たときには私も本当に悲しくなりました。
現実世界よりも過激になりやすく、一方コントロールもしやすいネット上だからこそ、こういった「聖域」が子どもや親たちに喜ばれるのも当然だと思います。
発達障害の子ども向けマインクラフト
(チャーリー)